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平成27年(2015年)12月20日(日) / 日医ニュース

メインテーマ「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」

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メインテーマ「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」

メインテーマ「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」

 平成27年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催、秋田県医師会担当)が10月24日、「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」をメインテーマとして、秋田市内で開催された。秋田県内での開催は初めてで、全国から405名が出席した。

 冒頭のあいさつで横倉義武会長は、「わが国の社会保障費が増加していく中で、医療を巡る環境は厳しさを増している。国民に過不足なく適切な医療を提供していくためには、我々医療界の大同団結が不可欠であり、団結なくして、山積する課題の解決は困難である」と述べた。

 続いてあいさつした小山田雍秋田県医師会長は、「本年7月に勤務医部会を設立した。今後は部会の設立趣旨の下、会員数の増加、組織の構築や内容の強化を進める一方で、勤務医不足、労働環境の改善等に積極的に取り組み、地域医療の発展、向上を目指して活動していきたい」とした。

 また、「近年、勤務医の入会が低調なのは大変憂慮すべきことである」としながらも、「日医が組織力の強化に当たって、研修医会員の年会費を減免する決定をされたことは、医師会への入会に対して強い動機づけになる」と述べた。

特別講演I「私の医師としての歩み」

メインテーマ「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」 横倉会長は、医師としての自身の歩みを、その時々の医療制度等と重ね合わせながら講演した。また、同会長が掲げる三つの方針の一つである「医師会組織強化」について、日医の取り組みを紹介した。

 最後に、座右の銘である「和して同ぜず」を肝に銘じて、これからの医療をより良いものにしていきたいと決意を述べた。

特別講演II「勤務医とチーム医療・地域医療の充実」

 有賀徹昭和大学病院長は、勤務医の現状について分析した上で、現在の支援策と喫緊の対策について講演した。

 「勤務医の働く環境において職能が広く移譲され、チーム医療へと展開することは、病院医療が強化される方向であることを意味するが、病院医療を補強する要素は他にも多々ある。チーム医療が多要素の一部であることを勘案すると、地域医療の充実には今後ともさまざまな努力が求められる」と述べた。

日医勤務医委員会報告、ランチョンセミナー

 日医勤務医委員会報告では、泉良平勤務医委員会委員長より、平成24・25年度の横倉会長への答申として提案し、実行された二つの方策「日本医師会理事の勤務医枠」「日本医学会総会への具体的な勤務医の参加」について報告があった。また、今期の諮問である「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備─その推進のために日本医師会が担う役割─」の検討状況等が報告された。

 ランチョンセミナーでは、菊地顕次秋田県厚生連由利組合総合病院長より「秋田県における医療組合運動の歴史」について話があった。

 また、坂本哲也秋田県医師会副会長より「秋田県医師会における勤務医部会設立の経緯」について報告が行われた。

シンポジウム

メインテーマ「日本の国情から見た理想的な勤務医とその将来像~地域医療充実へのロードマップ~」 「ロードマップI 医師会組織強化と勤務医」では、現在鋭意検討されている日医の組織力強化の方策について、「個の時代の組織力アップ方策~利点で説くか、理念で説くか~」(小松幹一郎相模原市医師会理事)、「医師会のメリット─2つの視点─」(佐原博之石川県医師会理事)の講演が行われた。

 「ロードマップII よりよい勤務環境とチーム医療」では、勤務医の過重労働を軽減するための理想的対策について、「秋田の一病院における勤務医労働環境」(小棚木均秋田赤十字病院長)、「外科系病棟への診療看護師(JNP)配属の成果」(磯部陽国立病院機構東京医療センター統括診療部長)、「効果的なチーム医療のための多職種連携を考察する」(清水貴子聖隷浜松病院人材育成センター副センター長)の講演が行われた。

 「ロードマップIII これからの理想的な勤務医のあり方と卒前・卒後教育の重要性」では、秋田大学、県医師会、県内医療機関の指導医が一体化してシームレスな教育展開を進めていることについて、「新専門医制度・国際認証時代を見据えて県内一体化したシームレスな教育の連鎖を推進する勤務医の将来像」(長谷川仁志秋田大学大学院医学系研究科医学教育学講座教授)、「あなたの専門はなんですか?─在宅医療を進める急性期病院脳神経外科専門医の思う理想的勤務医─」(桑原直行秋田県総合診療・家庭医研修センター副センター長)、「専門医による在宅医療」(市原利晃秋田往診クリニック院長)、「ワークライフバランスを革新するキャリア教育の新展開」(蓮沼直子秋田大学医学部総合地域医療推進学講座准教授)の講演が行われた。

 各シンポジウムでは、今村聡副会長(シンポジウムI)、笠井英夫常任理事(シンポジウムII)、小森貴常任理事(シンポジウムIII)が、それぞれ総括した後、フロアを交えた活発なディスカッションが行われた。

「あきた宣言」採択

 最後に、本協議会の総まとめとなる「あきた宣言」(別掲)が満場一致で採択され、協議会は閉会となった。

あきた宣言
 医療崩壊が叫ばれて久しいが、勤務医をめぐる諸問題がその要因になっていることが広く社会に認められるようになった。医療崩壊をくい止め、地域医療を充実させ、住民が安心して暮らせる社会をつくるには勤務医問題の解決が不可欠である。そのためには何よりも勤務医が果たす役割が重要で、勤務医の積極的大同団結がまず必要である。日本における最大の医師組織である日本医師会がその中心的役割を担うのは必然であり、より一層の組織強化が求められる。
 また、現代の医療においては、よりよい勤務環境を構築する上でも、多職種との連携によるチーム医療の推進がより一層求められる。
 医学においては新たな知見が日々加わり、医師に求められる知識、技術は広く高度になる一方である。医師は常にその修得に努めなければならず、そのためには充実した卒前・卒後教育が重要である。そして、われわれ勤務医は、自己の研鑽とともに、後進の指導にも努めなければならない。
 われわれは、理想的な勤務医であることを目指し、地域医療を充実させる使命を果たすことを誓い、次のとおり宣言する。
一、われわれは、勤務医の不足・偏在、労働環境の改善を図るための施策を行うことを国に求める。
一、われわれは、勤務医問題を解決するため、団結して行動する。
一、われわれは、多職種との連携によるチーム医療を推進する。
一、われわれは、卒前・卒後教育を充実したものとし、自己の研鑽と後進の指導に努める。
 平成27年10月24日
全国医師会勤務医部会連絡協議会・秋田

※外字は代替文字で標記しております。

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