勤務医のひろば
新たな専門医の仕組みの実施が1年延期となることが決定した。私は神経学を学び始めた後期研修医1年目であるが、心底安堵した。
今や国家試験合格者の約3分の1が女性であるが、約4人に1人が30歳代半ばに一旦現場を離脱するというデータがある。30代半ばといえば、専門医取得の直後。それまで妊娠・出産を控えていることが伺えるが、本当に理想どおりの人生設計ではないと思える。しかし、専門医資格がキャリアに必須の時代、研修中に休職して資格取得を遅らせるのは、とても恐いことだ。
家庭に関わる負担の多くを女性が担う現状の中で、それでも男性と同じだけ働くのを当然とする男性原理が、女性である私には重い。スタート地点からのハンディキャップであり、いわゆる「ガラスの天井」以前の問題と思える。
男性からも、長い研修が歓迎されるとは思えない。短期間で専門医になれる診療科を選択する人が、恐らく今後、男女ともに増えるだろう。特に研修期間と妊娠・出産とが重なりやすい女性にとっては、診療科選択の自由が今より狭くなろう。まして、今囁かれている、行政による医師定数配置が現実化したら、少なくとも一方が医師の共稼ぎ「家庭」は、家庭であり続けられるのか。
現案によると、内科系の臓器別診療科では、初期研修後も専門領域の研修に専心できるわけではないらしい。そして、神経学の専門医取得は、日米英独仏の比較で日本が最長となる。私は新制度から辛うじて逃れたが、やりきれない思いである。
上の世代がそうだったように、もっと早く専門家になれないか。修行は効率的であるべきだ。
それに、私は若い間に子どもも欲しいし、自分で責任を持って育てたい。貴重な年月を修行だけに費やしたくないのだ。