勤務医のページ
背景
少子高齢化の時代を迎え、地域医療構想においても診療所の医師に在宅診療が期待される中、勤務医の看護師等養成所における講師としての役割は重要な位置を占めていると考え、勤務医がどれだけ関わりをもっているか、アンケート調査を行った。
看護師等養成所に関わる医師の講義時間数については明確な報告がないようで、現状の把握としての基礎データでしか評価できない。また、福岡県下での調査であり、母数も少なく、影響する因子は多数考えられるため、統計学的評価は困難であることもご理解頂きたい。
アンケート結果より以下のいくつかの項目について、何らかの特徴が認められないか、注目し考察してみた。
①全日(昼間)コースと定時(夜間)コースでの医師の関わり
②都市部と郡部の医師の関わり
③医師会A会員(開業している会員)数からみた医師会規模との関わり
④医師会立と私設学校等の比較
―などである。
アンケート対象
調査対象は、高校・大学を除く、看護師等養成所41校で、回答数は、医師会立17校、学校法人10校、その他(市立、財団法人、社会医療法人、医療法人)9校の36校である。また、准看護師の次期入学募集を断念した1医師会にも、表に示したsとしてアンケートに参加頂いた。
結果と考察
注目項目の①と④については、講義の時間帯等の関係で看護科が対象となる。また、比較しやすいように専門基礎分野の講義時間割合を示す。全日コースと定時コースにおけるA会員と勤務医の講義時間の割合については、二年コースと三年コースを同等とみなし平均を算出した(各平均値を示す)。
医師会立全日コースと定時コースの比較
全日制 開業医:平均1・5%、勤務医:平均8・4%
定時制 開業医:平均2・4%、勤務医:平均8・5%
医師会立以外の看護学校の全日コースと定時コースの比較
全日制 開業医:平均0・5%、勤務医:9・0%
定時制 開業医:0%、勤務医:2・7%
①では、全日コースは診療時間の影響もあり、定時コースに比べ比較的勤務医の関わる割合が高い傾向にある。
④の医師会立と私設学校等の比較では、看護科の講義について全体的に医師の関わる割合が低い結果となった。
今回、表に掲載した対象は、医師会立の准看護師養成に関わる14校の講義時間割合である。総講義時間に対する割合と特に医師の関与が深い専門基礎科目の講義時間割合に絞って検討した。
准看護科の在学期間を通しての講義時間に対する医師が関わる割合は、A会員が平均約11%、勤務医が平均約4%であった(この数値が多いか少ないかは前にも記したが、これ以前のデータがなく評価しがたい)。
表では、A会員と勤務医の講義時間の割合を医師会会員数100人以上と未満で分けて表示している。また、先に記した平均値を基に、講義時間関与の割合が平均値以上についても色分けをしてみた。
A会員の会員数を100人という数値で分けてみたところ、これを上回る会員数の医師会立准看護師養成所では、比較的勤務医の担当する講義時間が多いことが分かる。数値だけでは判断しにくいが、その立地条件を考慮した時に、主要な都市部にある学校では比較的勤務医が講義を担当している割合が多い。
翻って、郡部の医師会立准看護師養成所の講義は、かなりの割合でA会員医師による講義割合が多かった。これは交通の便等を考慮すれば容易に想像がつくことかも知れないが、郡部においては診療所の医師が仕事の合間を縫って講義の時間をつくっている。
sは、准看護師の次期入学募集を断念した当時の講義時間割合の状況であるが、表のBグループの状況に当てはまる傾向で、更に医師会のおかれた状況はA会員数が100人未満であり、郡部の医師会に属する。全国には同様な状況の看護学校が多数存在するのではないだろうか。
高齢化社会における医療職のニーズが高まっている中、再就職の道の一つとしても重要な看護師等養成所の運営は、講義担当を、今後勤務医が担う比率が徐々に増加していかなければ地方の学校運営は成り立たないであろう。更に、新たな専門医の仕組みの導入如何(いかん)が、地域の中核病院を組み入れたものとならず、医師偏在が顕著となった場合にも影響が出てくるものと予想される。郡部における医師会会員においても、高齢化は進んでいるのである。
終わりに
勤務医の役割として、専門基礎科目講義に関わる割合は、今後増加する可能性がある。小規模の医師会においては、講義形態の検討も含め、早急に対応が必要と考える。