令和2年(2020年)3月20日(金) / 日医ニュース
日本医師会ジュニアドクターズネットワークに参加して
日本医師会ジュニアドクターズネットワーク代表 北海道医師会勤務医部会若手医師専門委員会副委員長 佐藤峰嘉
- 000
- 印刷
勤務医のページ
2015年の冬から、私は日本医師会ジュニアドクターズネットワーク(JMA―JDN)に参加している。
Junior Doctors Network
2010年10月、世界医師会(WMA)が若手医師の国際的なプラットフォームとしてJunior Doctors Network(JDN)の設置を承認した。アドボカシー、教育、国際協働を通じ、若い医師がより健康的な世界のために、共に活動できるようにすることがその目的である。JDNは、卒後10年以内の医師で構成され、WMAの準会員として、また、自国の医師会や研修医団体の代表団の一員として参加する者もいる。
WMAでは、世界の医師を代表する国際的な組織として、医の倫理や社会医学に関連するテーマが議論されている。ジュネーブ宣言などに代表されるさまざまな宣言、声明がその結果として公表される。JDNにおいても、ワーキンググループでそれらの議題について議論され、若手医師としての意見を提言する。最近は、AI等の新しいテクノロジーに関連するテーマなどで、積極的に若手医師としての意見が求められ、JDNは存在感を増している。
「若手医師」と一言でまとめても多様である。臨床医として研修中の者の他に、公衆衛生大学院に在籍する者もいる。感染症を専門にし、抗菌薬耐性について専門的な見地から意見する者もいる。また、公衆衛生を専門にし、気候変動の保健衛生に対する影響について、WMAの代表の一人としてUNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)のCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に出席し、提言する者もいる。若手医師としての役割と、自らの専門性の両方を発揮することは、若手ではありつつも保健衛生を担う者として貢献することができることを示している。
日本医師会ジュニアドクターズネットワーク(JMA―JDN)
日本においては、2012年に国際保健検討委員会の下、JMA―JDNが設立された。幅広い視野を持って、社会に貢献することのできる医師になることを目的としている。卒後10年以下の若手医師のネットワークとして、現在メーリングリストは250名ほどが参加している。
日医や国際保健検討委員会の先生方からご支援頂き、これまで世界エイズ・結核・マラリア対策基金の國井修戦略・投資・効果局長の講演会や健康の社会的決定要因で高名なサー・マイケル・マーモット先生とのワークショップを企画し、勉強させて頂く等の貴重な機会が与えられた。また、WMAやアジア大洋州医師会連合(CMAAO)の会議へ数名の若手医師を派遣して頂いている。
また、アドボカシーについてのワークショップを、東京大学大学院の神馬征峰先生に数回開催して頂き、若手医師や医学生の有志がそこで得たスキルを活かして、医師の働き方やUniversal Health Coverageについて提言してきた。特に、2017年11月に行われた卒後10年以下の若手医師と医学生を対象にした、医師の働き方に関するオンラインアンケートの調査結果は、若手世代の率直な意見が反映され、同年12月の厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では実際に活動メンバーが提言し、検討会の最終報告書にも引用された。
地域の医師会においても、JDNや若手医師の医師会参画に関心を寄せて下さることが多くなってきている。私の所属する北海道医師会では、勤務医部会に50歳以下の医師で構成する若手医師専門委員会が設けられている。委員会に出席する中で、先生方と意見交換を行い、北海道の地域医療における勤務医の実態を報告する機会も頂いた。
また、2016年からは「医学生・若手医師キャリアデザインセミナー」を開催し、医学生や研修医にキャリア形成に関する情報提供を行い、世代を超えた意見交換の機会を設けており、JMA―JDNも本セミナーの企画運営に協力してきた。医学生からは、実際に働く世代の話を聞くだけでも有意義であったとの感想を得た。より上の世代にとっては、これから医師として活躍が期待される世代が、どのような考えを持っているのか知る機会となっているようである。加えて、医学生や研修医にとっては、医師会をより身近に感じる機会ともなっているようである。
今後の課題や展望
ここまで、これまでの活動を述べてきたが、JDNや医師会で継続的に活動する若手世代は実際多くはない。しかし、それは医師会が取り組む保健衛生上の諸問題について、若手医師は関心がないということを意味するのではないと考える。日常診療の研鑽(けんさん)が本業であり、医師会の活動に参加することには、時間的にもさまざまハードルもあるだろう。私自身も診療や研究生活とのやりくりが難しい時もある。
また、我々自身もそのようなハードルの中であっても、若手医師がやりがいを感じられるような活動をする必要がある。活動についての若手医師の柔軟な考えや率直な意見を温かく受け止めて頂けるような医師会の環境も重要であると感じている。
最後に、この場を借りてこれまでご支援頂いている日医や各医師会の先生方に感謝申し上げるとともに、今後ともご指導を賜りたくお願い申し上げたい。