令和2年(2020年)9月20日(日) / 日医ニュース
医師は育児や介護を中心となって担うべきではない
東京女子医科大学放射線腫瘍学講座 教授・講座主任/全国医学部長病院長会議 男女共同参画推進委員会委員長 唐澤久美子
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勤務医のひろば
医師になって34年、二つの大学病院の本院に30年、国立の研究所に4年勤務し、ずっと勤務医を続けている。私の母は小児科医で、私が高校生の時に開業するまで大学病院と一般病院に勤務し、家には住み込みのお手伝いさんがいて、家事と育児を行っていた。それに習い、私も子どもができてから保母さんを頼み、家事と育児をお任せしていた。自分の大学病院の給与以上に保母さんへ払っていたが、それを当然と思い、仕事を減らそうとか、辞めようとか考えたことは一度もなかった。その理由は単純で、仕事がしたかったからである。
母は「あなたより私の方が医師として世の中の役に立っているので、孫の世話などしない」と言っていたが、孫が熱を出したりすると小児科医の本性が出るのか、夜でも薬を持ってきた。私の長女は大学病院に勤務する眼科医だが、彼女は子どもを保育園に入れ、帰りが遅くなる日のお迎えを、勤務医である父親(孫から見て祖父)に頼んだりしている。
全国医学部長病院長会議男女共同参画推進委員会は、平成30年度に「女性医師等のキャリア支援策に関する実態調査」を行い、それを踏まえて令和元年度に女性医師等のキャリア支援についての提言と、優れた取り組みの紹介を行った。調査から見て取れたのは、仕事を持っていても、女性が家事や育児の中心的担い手とされる、いわゆる固定的性別役割分担意識が強いことであった。
高度プロフェッショナルである医師が、家事や育児を中心となって担うことは医師不足につながり、それは結局、社会の損失となる。女性医師が医業に専念できる社会基盤整備や、家事等の外注を可能にさせる収入増加が、日本の医療発展の鍵の一つであると思えてならない。