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令和2年(2020年)9月20日(日) / 日医ニュース

男女共にキャリア継続を目指す 九州大学病院の取り組みについて

勤務医のページ

最近の統計による女性医師数の増加の現状

 2019年12月に公表された、2018年度の厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師統計によると、医療施設に従事する医師数は31万1963人で、そのうち女性医師は6万8296名で21・9%を占めている。特に29歳以下の女性医師の割合は35・9%であり、2016年度がそれぞれ21・1%、34・6%であったことを考えると、年々若い世代の女性医師が増加していることが分かる。勤務医だけに絞ると女性医師の割合は25・3%と更に増加する。

支援策の現状

 以前より、女性医師は出産・育児で離職するため、30~40歳代の就業率が低下することが指摘され、働き方改革が叫ばれる中、現場での医師数の減少が問題となってきている。国や医師会を始め、各診療科の学会・医会が託児所の設置やフレックス勤務の導入、職場環境の改善や休職後の復職プログラムなど、さまざまな対策を講じているが、これらはまだ十分に機能しているとは言えない。
 一番に重要なことは、男女共に意識改革だと考えるが、仕事の継続・復帰を希望してもそれが困難な環境にいる人も多く、支援プログラムの充実は必要だと思われる。
 また、これまで女性医師が対象であったが、男女共同参画の理念に従えば、男性医師の育児支援や男女問わず直面する親の介護支援、また自身が病気になった時の支援など、支援策にも多様性をもたせることが必要となってくる。

九州大学病院の取り組みの紹介

 九州大学病院では、2007年9月に施行された文部科学省大学改革推進事業「女性医療人きらめきプロジェクト」の後継として、2010年度より2019年10月まで「九州大学病院きらめきプロジェクト」を大学病院独自の予算で継続してきた。
 2019年11月からは恒常的な研修の一環として、九州大学病院臨床教育研修センターが、3番目のキャリア継続研修という意味を含めて、きらめきプロジェクトを包含することになった(下記組織図参照)
 今年度も含め、これまでに医師93名、歯科医師37名の合計130名を採用している。男女にかかわらず、育児・介護・自身の病気等のために九州大学病院を離職することなく十分に自身の能力を発揮し、キャリアを継続できる働きやすい環境をつくり、時代に対応しながら柔軟な働き方を提案していくことを目的としている。
 具体的な活動は、①毎月のスタッフミーティングによる交流でモチベーションを高める(今年度はコロナ感染の影響によりWEB会議で行っている)②講演会・学生交流会・スタッフ発表会などによる啓発と周知活動③ホームページ・きらめき通信・報告書による広報活動④医学部・歯学部生に対する性差医学や医療人としてのプロフェッション教育(学生達はこれまでジェンダーに関する講義や教育を受けたことがなく、新鮮に感じたようである。中学生・高校生からの教育が必要だと感じる)⑤学術学会・他大学・基幹病院・近隣の医療機関との連携(近隣の佐賀大学・久留米大学などとも交流し、情報交換している)⑥行政・医師会・歯科医師会・企業などの支援組織との連携(行政や医師会との連携は必須で、全国的な事業の紹介をしてもらい活動を広げている。また、大学を巣立った後のキャリア形成は医師会の協力が必須である。企業はアカデミアと違った視点での支援策を展開していることが多く、視野が広がり勉強になる)―などである。
 採用者は診療科等の協力を得、週に1~3回のパートタイム雇用によりキャリアを継続させている。診療科等にとっても医師確保が病院経費でできるため喜ばれている。
 また、研修や夜間開催の講演会をe-ラーニングにより提供するなどして、専門医の取得や更新、博士号の取得ができるようなシステムを構築し、これまでに医師、歯科医師合わせて、博士号の取得が8名、認定医・専門医取得が28名、認定医・専門医更新が18名と、キャリア継続だけではなくキャリアアップにも力を入れている。

今後の課題と展望

 2007年より前述の支援策を行ってきた結果、女性医師の就労継続にはある程度効果を上げ、パートタイムからフルタイムへの復帰が定着してきている。しかし、九州大学病院の現状は、女性医師の比率は後期研修医では45・4%と高いものの、医員では28・4%、助教授以上では14・4%と減少し、講師、准教授、教授はそれぞれ1人で、いまだに上位職は少ない。今後は継続だけではなく、キャリアアップへの支援策が必要である。
 また、今年度は男性2人がきらめきプロジェクトに採用された。1人は研究継続のため、1人は妻の女性医師がフルタイムに復帰し交替で育児を行うためである。今までは男性医師の支援も掲げながら、なかなか実現しなかったが、新しい時代が始まることを予感している。
 これからも、男女共に安定したキャリア継続、キャリアアップができることを目指して、活動していきたいと思う。

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九州大学病院組織図

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