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令和3年(2021年)4月20日(火) / 日医ニュース

勤務医の声をより効果的に日本医師会の医療政策へ反映させるために

勤務医のページ

 本稿では、今期勤務医委員会で協議を進めている中川俊男会長からの諮問『勤務医の意見を集約する方法、および勤務医が日本医師会に望むもの』への答申作成を念頭に、課題を整理、分析してみたい。

『開業医 vs.勤務医』の図式

 私は、前期委員長 泉 良平先生の後を受けて、令和2年10月より委員並びに委員長を拝命したが、実は、私が地元県医師会の役員になって間もない平成8年から22年までの14年間、本委員会の委員を務めさせて頂いていた。
 私が委員に着任した当初は、「『開業医 VS.勤務医』の図式をいかに克服するか」等のテーマの中で、「勤務医の意見は医師会の会務に十分に反映されていない」「勤務医は会員数に比して代議員数、役員数が少ない」「開業医は勤務医より多くの会費負担をしている」「民法上、会費の多寡にかかわらず、会員は同じ権利を有する」等の議論が繰り返しなされていた。
 この図式は、現在も完全には解消されてはいないと考えられるが、溝は少しずつ埋まりつつあると思われる。むしろ、開業医と勤務医の分断・対立の図式ではなく、それぞれの立場を尊重して、医師会組織を通して地域における医療課題に協働して向き合おうという機運が、徐々にではあるが、醸成されてきていると考える。

勤務医の医師会活動への参画

 勤務医は従来、都道府県医師会、郡市区等医師会における専門委員会等の委員として医師会活動に参画することが多かった。その中で、男女共同参画、働き方改革等のテーマでは中心的役割を果たし、病院等の勤務環境の改善にフィードバックしてきた。
 ただし、ここでも病院長等の管理職者と一般勤務医とで立場の差が顕在化することもあり、各都道府県医師会において多くの勤務医の意見を集約し、会務へ反映させる工夫がなされてきた。
 北海道医師会の「勤務医部会若手医師専門委員会」、京都府医師会の「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」に代表される、次世代の地域医療ネットワークの中核を担う医師育成等の先進的取り組みについては、前期の勤務医委員会答申(令和2年5月)に詳しく報告されている。

都道府県医師会等における勤務医部会、勤務医委員会の役割

 コロナ禍にあって医師の働き方改革の法案化が進められる中、勤務医、開業医双方の立場の違いを超えた協働が必要であることに異論を挟む余地はないであろう。
 特にコロナ禍においては、あちこちで潜在的にくすぶっていた諸課題が白日の下にさらされることが起きており、医療も例外ではなく、殊更わが国の地域医療の脆弱(ぜいじゃく)な点について強調して報道されることもあった。
 このような情勢の中で、全国の医師が一丸となって、喫緊の医療課題へ取り組む必要性がかつてないほど高まっており、勤務医の多様で建設的な意見を日本医師会、各都道府県医師会等の医療政策につなげていくことが重要である。
 表1に、各都道府県における令和2年度の勤務医部会及び勤務医委員会の設置状況を示す。
 ほとんど全ての都道府県において、勤務医部会または委員会が設置されており、前述の北海道医師会のように、勤務医部会の中に、テーマによって専門委員会を設けて活発な活動を継続している所もある。
 また、部会、委員会いずれも設置されていない県においても、理事会等で勤務医の課題について積極的に議論されていると聞いている。
 勤務医に係る諸課題は、今後ますます医療全体の中核の課題になっていくと思われ、委員会、部会と議論を深め、各都道府県医師会の理事会、更に、機会があれば、全国8ブロックの医師会(連合)(表2)の中でも多面的検討を行い、日本医師会勤務医委員会、代議員会等で更に議論をまとめながら、最終的に日本医師会における医療政策に反映させていくことが重要と考える。

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日本医師会と都道府県医師会等の勤務医活動との有機的連携

 以上のために、各都道府県における勤務医部会、勤務医委員会等の今一層の活性化が求められ、更に、日本医師会においても、議論の内容を積極的かつ柔軟に医療政策に具現化していくことが重要である。
 また、これらの好循環が続くことによって、自然に「開業医 VS.勤務医」の図式がとけていくのではないだろうか。
 私が本委員会へ出始めた頃に、ベテランの委員(勤務医)の先生が何げなく「勤務医委員会は勤務医の不満が爆発しないように抑える『ガス抜き』のような役割」と自嘲気味に呟(つぶや)いておられたのを印象深く記憶している。その後、状況は大きく変化してきていると思われるが、勤務医も中核の医師会員であるという実感を高めていくことも重要である。
 勤務医は、所属する病院の立場もあり、また、公務員である医師も少なくないため、医師会を通して個人の意見を集約し発信することが、勤務医にとってもメリットが大きいと思われる。これらの意見、提言をしっかり受け止めて、日本医師会の医療政策に有機的につながるよう、今期の勤務医委員会の運営を行っていきたいと考える。

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