勤務医のひろば
新型コロナウイルス感染症が落ち着いた後は、再び地域医療構想が進められていくことになる。本症による受診控えの影響もあり、入院患者数が減少している中で、病院の統合・機能分化・連携などは、これまでより加速される可能性もある。
しかし、統合は経営母体の違いなどかなりハードルが高く、病院間での急性期・回復期病床の分担や、診療科の集約化などが取り組みやすいと思われる。
少子化により、既に産科・小児科の集約化が進んでおり、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科などでは、非常勤医師での運用をしている病院も多い。一つの病院に人的資源を集約し、検査・手術などを行えば、効率化、技術向上、働き方改革の面から見て非常に有意義である。
すなわち、A病院は耳鼻咽喉科、B病院は皮膚科、C病院は泌尿器科というように、得意分野を担当してもらうわけである。
ここで重要なことは、他院に集約化された診療科の受診が必要となった時に、患者が短時間で容易に移動できるかどうかである。この問題は、都会ではそれほどではないかも知れないが、地方では重大な問題である。
これまで地方都市では、少々の距離であれば自動車で20分もあれば容易に移動できたのだが、高齢化が加速した社会では、本人の運転や家族による援助が不可能な場合が頻繁に生じてくる。
各病院を効率的に結ぶ交通機関としては、電車、バス、タクシーなどがあるが、電車がフリークエントサービスとパンクチュアリティの面から、圧倒的に優位である。
富山市は以前よりLRT(Light Rail Transit)を積極的に導入しており、LRTにより連携している病院群をつなぐことができれば有用である。地域医療構想の実現のためには、行政の街づくりのビジョンが必要かも知れない。