勤務医のひろば
現在、栃木県医師会の常任理事として、生涯教育、医療保険などを担当している。
私は、自治医科大学で腎臓内科の教授をしていた関係もあり、研修医の教育やその後のキャリア形成に関しては、特段の思い入れがある。
"経験は最大の教師"をモットーに、研修医教育は種々の臨床経験が積めるようにアレンジした。すなわち、大学病院で指導医の下で臨床経験を積み、中核病院ではもう少し自由に診療ができるので、積極的に派遣に出した。
更には、診療所での経験も重要と考えたので、近隣の透析クリニックで外来診療や透析診療を経験させた。
これにより、大学病院以外の医療現場をおおよそ経験できるだけでなく、例えば診療所の医師から、また中核病院の医師から患者を紹介されても、各医療機関の特徴を理解できているので、連携がスムーズにいくと考えた。
また、医師のライフサイクルを考え、魅力的な研修、関連病院研修、基礎研究、留学、女性医師の仕事などを勘案して、次の三つのコースを設定した。
一つ目は、入局後10年程度で内科認定医、腎臓専門医、透析専門医を取得するコースである。
二つ目は、留学を目指す場合は大学院、留学期間を入れると入局後15年前後で博士号取得、海外留学も経験できるコースである。
三つ目は女性医師の場合である。女性は30歳前後で結婚する場合が多いので30歳代は産休、育休を取りながら短時間勤務でも内科認定医、腎臓専門医、透析専門医を取得することができるコースである。
長期的なキャリア形成の方針が明確だったので、我々腎臓内科は研修医から人気があり、私が退職した平成25年3月末時点では43名の医師が所属していた。
やはり、個々人の希望を十分考慮して、適材適所で仕事をしてもらうことが大切だと考える今日この頃である。