勤務医のページ
私と岩手県立病院
私は平成3年に自治医科大学を卒業し、初期研修の後に医師3年目で地元の岩手医科大学外科学第一講座(現在の外科学講座)に入局した。その後の人事は医局人事ながら、自治医科大学の卒後義務年限を考慮して頂き、結果、現在まで県立病院に継続して勤務している。
岩手県の26県立病院等の状況、"岩手県立病院院長会"に関しては本紙第1439号「勤務医のページ」の「勤務医のひろば」のコーナーで、県立中部病院長の伊藤達朗氏より紹介があったとおりである。
記載のとおり、全病院長会の関係が良好であるように、病院間の連携もスムーズで、私自身の経験としては、ある病院での勤務時は一人外科長であったが、近隣県立病院の先生方に応援に来て頂き、診療、手術をしていた時期もあった。また、県立病院間の転勤では、共通するソフト、ハードのシステムがあり、仕事の慣れに困難を感じたことはない。そして、私自身の現在は、2021年4月より県立千厩(せんまや)病院(通常は152床だがコロナ禍で86床に縮小体制:常勤医9人、全職員200人)に、初めて院長として勤務している。
岩手県立病院と新型コロナウイルス感染症
本紙第1427号「勤務医のページ」にて、県立中央病院長の宮田剛氏から新型コロナウイルス感染症に関する岩手県からの報告として、1年前の2021年1月まで(全国的には第3波)の県内の状況が紹介されている。
その頃は、まだ全国に比べれば、県内の患者数は多くはなかったが、その後の第5波の時には岩手県でも全国同様、大きな波となった。続報と述べるのはおこがましいが、新型コロナウイルス感染症第5波及びこれまでの県立病院の対応について述べたいと思う。
地域病院である当院の対応
岩手県立病院、診療センターの構成は、病院が20施設、診療センターが6施設である。病院20施設の内訳は、県内9医療圏に1箇所ずつの9中核病院と、そこに付随する形で11地域病院となっている。今回の新型コロナウイルス感染症対策として、入院対応は9中核病院と6地域病院が担当した。
その6地域病院の一つである当院では、2020年11月3日に1例目が入院した。当初は軽症から重症まで10床で運用していた。その後、地域での病院間の役割分担を進め、2021年7月より20床の体制で、軽症から中等症Ⅰまでの患者に対応した。
7~9月までの第5波では全国の例に漏れず、当院の規模ではまさに自転車操業的な業務で繁忙を極めた。入院後は、経過観察または治療後に、安定、軽快を確認し、退院できる発症10日目では、ベッド確保のため宿泊療養所へ紹介した。
結局、初例から7月までの約半年で50数名の入院だったが、8月の1カ月で60名が入院した。当院の最終入院は9月26日で、その後執筆している12月末日まで入院はない。
県立病院全体では
更に、県立病院全体の受け入れ状況を述べる。ただし、県全体の数値は県発表による正確なものだが、県立病院関連の数値は公式ではなく、それぞれの病院からの申告により県立病院関連部署が取りまとめたので、若干の誤差があり得ることを承知願う。
岩手県内の累計患者数は2021年12月末日まで3487人で、そのうち県立病院全体の受け入れは1295人であり(表)、岩手県全体の37・2%を担った。県立病院で亡くなった患者さんは19名で死亡率は1・5%となり、全国平均より高かった。また、岩手県全体の死亡者数は53名で、県全体の死亡率も1・5%だった。全国平均より高い原因は分析中である。
ただ、県立病院の話に戻るが、2021年7月以降では入院776名中、亡くなったのは60代、70代、90代、それぞれ1名の計3名で、第5波に限れば死亡率は0・39%となる。
このように、県立病院間の状況は情報共有があるので把握できるが、県内罹患者のうち、県立病院以外に入院した2192人、全体の62・8%に関しては、県の方針で入院先などの詳細は、現時点では非公開である。
表:岩手県立病院のCOVID-19患者受入数
※若干の誤差の可能性あり 2021年12月21日
第6波に対して
当院のような、新型コロナウイルス感染症の対応をする小規模の地域病院で受け入れた患者の総数は、県立病院全体の約30%だった。もちろん、軽症から重症を管理する中核病院の苦労には及ばないが、医師、スタッフとも少人数で対応する業務は軽症者対応といえども、疾患のスティグマ、偏見、差別から困難を感じた。ちなみに、6地域病院のうち、3病院では院長自らが担当医として診療した。
現在、オミクロン株の感染が全国的な広がりを見せ、第6波を迎え、いつまた新たな株が出現するかも分からない状況にある。
しかし、人間が考えても悩んでも、ウイルスは関係なく活動する。これまでどおり、手洗い、マスク、三密回避という基本に徹するしかないであろう。県民一丸で迎える準備はできている。