令和4年(2022年)5月20日(金) / 日医ニュース
医師の働き方改革における医師会の役割
富山県厚生連常務理事/富山県厚生連滑川病院整形外科部長/公益社団法人富山県医師会常任理事/一般社団法人滑川市医師会副会長 南里泰弘
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勤務医のページ
2024年4月に医師の時間外労働の上限規制が施行される。
これまで勤務医は労働法に関してあまり知識等がなく、地域の救急医療を中心とした場において多くの時間を費やしてきた。その中でも若手医師は技術習得、キャリア形成の手段の一つとして長時間勤務を受け入れてきた事実がある。
しかしながら、それにより医師の健康が損なわれ、医療安全においても問題であることが表面化した。それらを改善すべき政策として、医師の働き方改革は非常に重要な課題となる。
しかし、時間外労働の上限規制により、地域医療、とりわけ救急医療の宿・当直、休日の日直業務を担っている大学病院の勤務医、また産婦人科医、小児科医の平日の勤務体制が滞ることが危惧される。
それらを両立するには、各病院単位の取り組みだけでは十分ではないことが予想される。そこには勤務医と共に歩む姿勢を示す日本医師会、各都道府県医師会の介入なくしてはなかなか解決できない問題が含まれている。
1.地域医療における勤務医の役割と働き方
救急医療を中心とした地域医療を支えているのは若手医師である。
宿・当直や休日の日直を、主に大学病院からの若手医師の派遣で補っている現状がある。医局からの指示で行くこともあれば、個人的に請け負っていることもある。時間外労働の上限規制の施行により、大学病院の勤務医の派遣切りが起こり、地域医療、とりわけ救急医療の維持が困難を極めることが容易に想像できる。
医師が少ない小児科医や産婦人科医にとっては、各病院にとっても、救急センターにとっても、頭では理解していても甚だ困難を極める。特に産婦人科医の場合、オンコール体制で待機させられて、いざ出産となり呼び出された場合、救急対応で緊急手術等により呼び出された場合の時間外勤務の取り扱い、オンコール待機の時間の取り扱いを整理する必要がある。
病院管理者は、その施設内での時間外勤務時間は把握していても、出張先での勤務状況、時間の管理が十分できていない場合もある。個々の医師の時間外勤務をどれほど管理できているか疑問である。
勤務医自身が医師の働き方の制度について正確に理解していない現状を踏まえて、日本医師会、都道府県医師会は今こそ勤務医のために立ち上がるべきであり、病院管理者、部科長以上の医師のみならず、全ての勤務医に対してこの内容を理解させるように周知すべきである。地域医療を守りながらも医師の健康管理を十分に守ってこそ医師会のあるべき姿である。
2. 医師会の取り組み〔医療労務管理アドバイザー(社会保険労務士)とのタッグ〕
日本医師会は、医師の労働時間短縮の取り組みを評価する組織としての「医療機関勤務環境評価センター」を2022年度から受け入れる体制づくりを行っており、非常に好ましいことである。
一方で、地域医療を一番良く理解している各都道府県医師会が行政と共に関与することで、地域医療の均てん化が享受できるものと理解する。
やみくもに、単に時間の切り捨てを行うことではなく、地域、診療科による個々の症例に基づいて、医師会と行政がタッグを組んで改善に取り組まなければならない。
医師会が勤務医のために何をしているのかが良く問われるが、これこそ勤務医にとって目に見える、医師会たる組織が行うべき取り組みではないだろうか。
医療機関においては、年960時間を超えることが予想される場合、「医療機関勤務環境評価センター」から労働時間短縮の取り組みの評価を受けることが必要となる。
労働時間短縮計画の作成において医療機関のみで対処することは大変であり、個々の医師だけでは到底無理だと思われる。そこで活用すべきなのが、各都道府県に設置されている「医療勤務環境改善支援センター」(以下、勤改センター)である。
「勤改センター」は、県によっては医師会内に事務所を置いて、社会保険労務士(社労士)による勤務改善を始め、女性医師支援、経営相談等あらゆる問題について相談に乗ることができる。
都道府県医師会館内に社労士を駐在させている例は現在少なく、十分に活用されていないのが現状ではなかろうか。富山県においても、2021年3月までは県庁内での設置であり、各医療機関、個々の勤務医からの相談はほとんどなかったのが現実である。
その打開策として、本年度から富山県医師会内に社労士を週2回駐在させ、平日9時から17時まで常時電話対応することで医師の働き方、特に時間外規制の相談等、気楽に相談できる体制づくりを始めた。もちろん「勤改センター」は医師だけではなく、看護師等医療に携わるもの全ての相談を受け入れるものであり、病・医院勤務者にとってワンストップダイヤルとして解決すべき相談窓口となり得る。
社労士による相談窓口は医師の時間外労働の上限規制の問題だけでなく、経営コンサルタントとしての相談や、カスタマーハラスメント等に対しても相談でき、勤務環境改善マネジメントシステムについてもアドバイスしてもらえる。
これこそが、医師会が勤務医に対して直に接して共に歩んでいる姿ではなかろうか。また、医療機関勤務環境評価センターについても、医師会主導で行われることが、医師会が真に勤務医と共に存在することへのアピールと考える。
都道府県医師会内への社労士の駐在はまだまだ少数であるが、全国的にこの取り組みが増えれば、時間外規制を始めとして、医師の働き方改革に大きな功績を記す第一歩となるのではないか。
この取り組みこそ医師会が勤務医と共に歩んでいく大きな一歩と考える。
お知らせ |
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厚生労働省では、日本医師会などの要望を受けて、医療機関の宿日直許可申請について、制度の仕組みや手続き等に関する相談窓口を設置しています。 ぜひ、ご活用下さい。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24880.html |