勤務医のページ
勤務医委員会(委員長:渡辺憲鳥取県医師会長)は、諮問「勤務医の意見を集約する方法、および勤務医が日本医師会に望むもの」に対する答申を取りまとめた。その概要を2回に分けて、紹介する。 |
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勤務医の意見を集約する方法
1.意見集約のための仕組み作り
(1)都道府県医師会および郡市区等医師会の勤務医部会・委員会の活性化
①議論・提言を日本医師会の医療政策へつなげること
勤務医の意見の集約は、協議の場を整備することから始まる。勤務医部会・委員会が設置されていない都道府県医師会及び郡市区等医師会では勤務医部会の立ち上げを、既存の勤務医部会については更なる活性化を図る必要がある。
各部会・委員会では、必要に応じて意見や提言を取りまとめ、郡市区等医師会、都道府県医師会、全国8ブロックの医師会連合、日本医師会へと上げていく仕組みを構築することが望まれる。
ここで、大切なことは都道府県医師会や日本医師会においてもしっかりと内容を吟味し、行政に対する提言に取り込むことである。このことは、勤務医を含む全ての医師を代表する医師会役員の責務でもある。
②勤務医部会・委員会の構成員の多様化
地域によって勤務医部会等の活動はさまざまであることから、大学医師会との協働や多様な価値観を持った勤務医が医師会へ関心を向けるための対策が必要である。
そこで、定期的に行政や大学医師会、大学病院と連携して若手医師の交流の場を設けることの他、各都道府県医師会において大学病院、地域中核病院等の立場の違う医師が集まって意見を述べるような会合を持つことが、構成員の多様化にもつながるものと考える。
また、病院におけるそれぞれの立場からの意見を反映するための小委員会を本委員会内に設置することなどを通じて、本委員会への提言をまとめてもらうなどの、新たな取り組みも有用と考える。
(2)医師会三層構造における相互関係性強化・病院諸団体との連携
勤務医の意見、要望は必ずしも方向性を同じくするものではない。
意見の「集約」が本当に必要か、そもそも可能かについては疑問視する声もあるが、それぞれに違う方向性ではあっても、それら多くの意見を「拾い上げる」仕組みが日本医師会には必要と考える。
勤務医それぞれが抱える意見を拾い上げることは、三層全ての医師会にとって重要なテーマであり、各医師会の相互関連性の強化とそれぞれの立場からの現状分析、課題解決への取り組みも必要である。
同時に、病院諸団体と連携し、大きな政策的提言にまとめていくのは日本医師会をおいて他にはないと考える。そうした中で、政策提言につながる意見集約の一翼を本委員会が担っていくことも重要である。
(3)全国8つの医師会ブロックにおける勤務医部会・委員会の設立
勤務医の意見は、大学医師会を含む郡市区等医師会から、都道府県医師会を通じて、日本医師会へとボトムアップしていく形式で集約されることが期待されるが、特に若手勤務医の意見が集約されにくいのが現状である。
各医師会ブロックにおいては、それぞれの地域性を十分に反映した実践的な議論が可能であり、また具体的な取り組みの推進及び提言も得られやすいと考える。
そこで、各医師会ブロックに勤務医部会・委員会などの組織や機能を常設し、意見集約を行い、それぞれの代表者と日本医師会との定期的な協議の場を設置することを提案したい。これについて、今後、本委員会の新たな機能として加えることも必要と考える。
2.若手医師に対する取り組み
(1)若手勤務医の医師会活動の参画
①既存の勤務医部会・委員会におけるリーダー的勤務医の育成
価値観が多様であることは、個別具体的な意見を集約することの困難さと同時に、全体を代表するリーダー育成の困難さをも意味する。まずは次世代のリーダー像について、従来の価値観や固定観念を取り払える環境で十分に議論し形づくっていく必要がある。
更に、医師会として、組織が望むロールモデルではない少数派医師にも重点的に光を当てる仕組みづくり、取り組みが必要である。
②「若手勤務医会」(病院の中枢を担う勤務医と医師会未入会の若手勤務医など、異なる視点からの意見を拾う場)の設置
「医師会活動に若手医師の参加を」は医師会のキーコンセプトの一つとなっているが、医学生時代から意見を拾い上げる場をつくり、医師会の先輩医師が共に実現可能な提案を医師会活動として取り上げていくという、連続性のある時間を積み上げていくことが必要である。
(2)若手医師への支援
①勤務医の活動状況を横断的に紹介できる体制作り
郡市区等医師会、都道府県医師会の各種委員会、行政における医療関係委員会等に参加している勤務医を紹介し、医師会雑誌やドクタラーゼで活動内容を紹介したり、地域の病院組織からこれらの勤務医をリストアップし、職場横断的に勤務医へ情報発信したりする体制づくりが有用ではないか。
また、医師資格を有する行政官などもこれら情報発信の活動に参画してもらい、更に、情報発信の媒体も雑誌等に限らず、ホームページやSNSなどを活用していくことも考慮すべきである。
②"Student Doctor"への支援・関係作り
全国医学部長病院長会議では、共用試験合格者のうち参加型臨床実習を行うに足ると認定された学生を、いわゆる"Student Doctor"とすることを提言している。
この"Student Doctor"のうち、希望者を「日本医師会医学生会員(仮)」として登録し、医師会活動に見学参加できるようなプログラムを設けてはどうか。更に、「医学生会員(仮)」には日本医師会刊行物の定期的な直接配付や、集会を開催する他、各都道府県医師会が同様の活動の場を提供していくことも、医師会との関係づくりにおいて有用と考える。
③若手医師が医師会活動に参画するための体制作り
勤務医の意見を集約する方法としては、まず各都道府県医師会の勤務医部会・委員会にて勤務医の意見・要望を幅広く拾う必要があるが、とりわけ若手医師による意見を集約する場として、意見交換の場を設けることが必要と考える。
若手医師の意見を集約するには、まず若手医師の意見を聞くことから始まる。そのためには、病院管理者が、若手医師の医師会活動参画のための体制づくり、更には、勤務上の配慮をしっかりと行うことなくしては、なし得ない。
3.病院等との意見交換の場の設置
(1)病院における多様な立場の医師の意見の集約
①各地域医療構想区域等における中核的病院の幹部・リーダー的医師との意見交換
特に複数の中核的病院を有する大都市圏では、中核的病院の幹部医師やリーダー的医師との意見交換が効果的に行われることで、医師の生涯研修や地域医療の発展、保険診療の充実の他、非常時における各施設の能動的かつ効率的機能分担にもつながる。
そのため、全ての都道府県医師会の勤務医部会・委員会等において、各地域医療構想区域等における中核的病院の管理者・幹部医師と共に、多様なリーダー的医師が広く参画する意見交換の場や活動を企画していくことを提言する。
②管理職・中間管理職・若手医師・女性医師など異なる年代や立場の医師の意見を求める工夫
地域の医師会において勤務医の意見の集約を考える場合に、大学医師会や中核病院、また、課題によっては中小病院などと協働して、その課題ごとにステークホルダーとなる年代や立場の医師の意見を求める工夫や柔軟な枠組みの構築も、今後、医師会の勤務医部会・委員会にとって極めて重要と考える。
(2)医師会と病院団体との定期協議の場の設置
地域によっては、都道府県医師会と病院団体の定期協議の場が既に設置されているところもある。
今般の新型コロナウイルス感染症対策においては、各都道府県で、医師会と病院団体との連携深化が醸成されたのではなかろうか。医師会と病院団体が定期協議の場を設けることは、勤務医に係る諸課題が両者の重要なテーマとなってきている昨今、極めて有用である。