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令和4年(2022年)10月20日(木) / 日医ニュース

整形外科医の働き方改革―多職種連携診療―

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整形外科医の働き方改革―多職種連携診療―

整形外科医の働き方改革―多職種連携診療―

 2024年4月からの医師の働き方改革施行が目前に迫っているが、医師数が増えない中で実際に行えるものであろうか? 仕事量を減らすしか根本的な解決法はないと思える。
 一方、今更言うまでもないが、わが国は急速な人口の超高齢化を迎えており、『令和4年高齢社会白書』によれば、2021年の65歳以上人口の割合は28・9%で、2040年には35・3%になると推定されている。
 我々整形外科に関して言えば、骨折、関節疾患、脊椎疾患など、ほとんどの分野で治療対象は高齢者となっている。つまり、今後高齢患者数は増えるため、整形外科医の仕事量の増加が見込まれる。

急増する高齢者大腿骨近位部骨折

 骨折に関しては、高エネルギー損傷は著しく減少し、骨粗鬆症を基盤とする高齢者骨折が大部分を占めるようになった。中でも、高齢者大腿骨頚部/転子部骨折(以下近位部骨折)は2020年で約24万例発生しており、2040年には32万例に増加すると推定されている(大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン第3版)。
 また、その約95%は手術的に治療されている。日本整形外科学会の全国調査では、その発生年齢は年々高齢化しており、80歳以上の増加が著しく、100歳以上の患者も少なくない。
 働き方改革を可能にし、かつ適切な医療を提供するには、整形外科医以外の職種の協力を仰ぐしかないと考える。

多職種連携診療:Orthogeriatric comanagement

 また、高齢者は単に骨折を起こしただけではなく、中枢神経障害、心肺機能低下、代謝障害、腎機能低下、免疫能低下やサルコペニアなど多くの疾患を抱え、単に骨折を治療するだけでは十分ではなく、整形外科医だけでの治療には限界がある。
 そのため、多職種が連携した早期手術、周術期管理、次の骨折を予防する2次骨折予防が不可欠である。
 特に内科医、老年病医の協力は非常に重要で、欧米では既に高齢者骨折を診療対象とした整形外科老年病医(Orthogeriatrician)が病棟に常駐し、多職種の協力の下、高齢者骨折の診療を行っている(Orthogeriatric comanagement)。

多職種連携診療の実際と成果

221020k2.jpg 筆者が2020年まで在職した富山市民病院では、2014年から高齢者大腿骨近位部骨折に対し、多職種連携診療を導入した。
 そこでは方針として、①高齢者大腿骨近位部骨折患者を単なる整形外科の骨折患者としてではなく、種々の疾病を有する高齢者がたまたま骨折を起こしたとして病院全体で治療②徹底的に効率化することで、仕事量を減らし治療をスムーズにするとともに、より良い医療を提供―することにした。
 参加した職種は、整形外科医、整形外科病棟専属老年病医、内科医、麻酔科医、精神科医、泌尿器科医、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、栄養師、医療ソーシャルワーカー、理学療法士、医師課職員である。
 2013年から準備期間として1年を掛けて毎月チーム会議を開き、自施設の現状把握、各部門での効率化、各部門間の連携簡略化、手術までの統一電子カルテの導入と院内紹介状の廃止、各部門の業務マニュアル作成、術前評価を目的とした専門内科受診基準作成を行った。
 その結果、2014年1月~2019年12月までの6年間に観血的治療を行った65歳以上の大腿骨近位部骨折患者827例(男性169例・女性658例)、平均年齢84・7(65~101歳)において、手術待機期間平均1・7日(全国平均3・9日:2020年日本整形外科学会全国調査)、平均在院日数は21・1日(全国平均36・2日:同調査)と、全国平均に比較し著しく短く、回復期施設退院時の歩行獲得率75%以上、退院時の骨粗鬆症治療率92%、更に骨折リエゾンサービスにより1年後の治療継続率72%となった。
 一方、総入院医療費は、毎年、全国のDPC病院平均より10~20%少なかった。
 整形外科専属の老年病医が診療に加わったことにより、術後合併症(特に肺炎)の減少、ポリファーマシーの整理が可能となった。
 また、整形外科医は、患者の内科的合併症に振り回されることなく、整形外科治療に専念できるようになり、時間的かつ精神的負担も軽減された。
 更に、整形外科医と老年病医が共に症例検討を行うことにより、お互いの理解が深まるとともに、多職種連携導入後の調査でも多くの職種で仕事量が減ったとの回答を得た。

医師の働き方改革に向けて

 整形外科の手術対象が拡大しているにもかかわらず、手術を行う整形外科医数の急な増加が見込めないこと、また、外傷に限らず整形外科各専門分野の患者が高齢者であることを考えると、整形外科医が高齢者の全身管理に振り回されることなく、整形外科治療をよく理解した整形外科老年病医(Orthogeriatrician)と多職種の協力を得て、専門分野の治療に専念できる環境の整備が不可欠である。
 しかし、日本ではいまだに老年病医の数が少なく、各施設で老年病医の協力を得ることが難しいのが現状であるため、内科医や総合診療医の協力を得て多職種連携診療に取り組むのが現実的である。
 幸い、2022年4月の診療報酬改定で、高齢者大腿骨近位部骨折に対する緊急整復固定及び緊急人工骨頭挿入術に対する加算が認められ、その中で、①多職種連携を目的とした大腿骨近位部骨折患者に対する院内ガイドライン及びマニュアル②速やかな術前評価を目的とした院内の内科受診基準―を作成することが要件となった。
 また、二次性骨折予防継続管理料の加算も認められたことは、多職種連携診療を進める上で大きな追い風となっている。

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