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令和5年(2023年)12月20日(水) / 日医ニュース

初の試みとして医療通訳サービスのデモを実施

初の試みとして医療通訳サービスのデモを実施

初の試みとして医療通訳サービスのデモを実施

 2023年度防災訓練(災害時情報通信訓練)北海道・千島海溝地震津波災害想定訓練を11月16日、関連団体事業者などの協力により、WEB会議システムを用いて実施した。
 今回の訓練は、日本医師会には従来から使用しているスカパーJSATのアンテナを、想定被災地である釧路市医師会にスカパーJSATのアンテナに加え、KDDIの「スターリンク」のアンテナをそれぞれ設置し、異なる衛星通信のネット接続を試みるとともに、北海道医師会とは、NTTドコモの衛星電話「ワイドスターⅡ」を利用し、被害状況などの報告を行った他、医療通訳サービスのデモンストレーションも行った。
 当日は、細川秀一常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松家治道北海道医師会長は、北海道では本年2月に日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震減災計画を策定し、千島海溝地震の津波により10万人超と想定されている死者数を2031年度までの10年間で8割減にする目標を立て、体制づくりを進めていることを説明した。
 続いて、柴田香織釧路市医師会長は、北海道東部太平洋沿岸地域において、今後30年以内に震度6弱の地震発生率が約80%に達するとされていることに触れ、その甚大な被害を想定し、迅速かつ効率的な医療情報の共有と役割分担が重要になると指摘。「被災地において、JMAT等の医療支援チームの共同活動を充実させるためには、しっかりとした情報通信システムの機能が必要であり、今回の防災訓練を通して災害発生に備えていきたい」と述べた。
 訓練の途中には、出張先からオンラインで松本吉郎会長が参加。今回、千島海溝地震津波災害を取り上げた背景として、本会が参画している政府の中央防災会議で、日本海溝・千島海溝地震に関する基本計画が変更されたことがあると説明した。また、訓練実施に当たっては、細川・笹本洋一両常任理事が想定被災地となる釧路市を事前視察し、今回の防災訓練の内容を決定したことなどにも触れ、訓練の成果に期待感を示した。
 当日の訓練では、まず、細川常任理事が、防災訓練開始を宣言し、千島海溝地震による被害概要を説明。その後、別掲の訓練の流れに沿った形で進められた。
 その中では、(1)釧路市の防災対策(石田貴志釧路市避難対策調整主幹)、(2)スターリンク(KDDI「認定Starlinkインテグレーター」担当者)、(3)災害診療記録J―SPEED(久保達彦広島大学大学院医系科学研究科教授)、(4)災害時における障害児の対策とその課題(加藤光広日本小児神経学会理事長)、(5)北海道の災害医療支援の課題(丹野克俊JMAT北海道統括責任者)―について概説がなされた。
 その他、今回初めての試みとして、災害時に避難所等で日本語が通じない外国人がいる場合を想定し、指差しツールである言語確認シートなどを用いて、ベトナム人患者を黒瀨巌常任理事が、中国人患者を細川常任理事が、それぞれJMAT医師となり、医学通訳サービス(メディフォン)を介した診察のデモンストレーションを行った。
 訓練後の講評では、「訓練には手間、時間、費用が掛かるが、訓練を怠ると災害時には訓練以上の負担が掛かるため、平時からの備えが必要」「さまざまなツールを活用して行われ、その導入や関わり方などが参考となった」などの意見の他、被災地に到着するまでの日数が掛かる場合にはJMATの派遣期間の延長など柔軟な対応が求められることや、広大な北海道では、ホテル、ガソリンの確保など、自己完結を十分に考えて被災地に行く必要があるなどの課題が指摘された。
 総括を行った茂松茂人副会長は、今回の訓練の関係者に謝意を示すとともに、「南海トラフとは異なる地震特性に応じた対応やスターリンクの通信状況が確認できたばかりでなく、医療通訳のシミュレーションができたことは大きな成果となった」とし、訓練は終了となった。

<当日の訓練の流れ>(抜粋)

●発災1日目 20XX年11月16日(木)
北海道厚岸沖にて、千島海溝地震が発生。
日本医師会に対策本部を設置、オクレンジャーを使用し、都道府県医師会との情報共有と役職員の安否確認を行う。

●発災2日目 11月17日(金)
第1回災害対策本部会議を開催。政府による後発地震発生の可能性及び千島海溝沿いのプレートの特性による注意喚起があり、JMAT派遣はいったん保留。
JAXAの防災インタフェースシステムを通じて人工衛星の観測データを受信し、日本医師会地域医療情報システム「JMAP」に反映。深刻な被害が発生していることを確認し、対策本部の下にJMAT本部を設置。
日本医師会館がサイバー攻撃によりネット接続不可となり、スカパーJSATアンテナを設置し、回線を確保。
第1回都道府県医師会との緊急WEB会議を開催。
厚生労働省よりJMATの要請を受け、都道府県医師会にJMATの編成、待機を要請。

●発災4日目 11月19日(日・日本医師会館休業日)
日本災害医学会及び日本環境感染学会に協力要請。
東北、東京、関東甲信越ブロックの都県医師会にJMAT派遣要請。
(中略)

●災害9日目 11月24日(金)
厚労省を通して内閣府との間でJMAT派遣への災害救助法適用スキームの交渉を開始。
(中略)

●発災13日目 11月28日(火)
被災地の支援のために補正予算、特別立法に関する要望書を取りまとめ、内閣総理大臣、厚労大臣等へ提出。
(中略)

●発災4週経過 12月14日(木)
「J-SPEED」で状況を確認の上、12月21日の派遣をもって中部、近畿、中国四国、九州ブロックのJMAT派遣を終了することを決定。
(中略)

●発災9週経過 1月18日(木)
JMAT活動を終了することを決定。医師等の不足が深刻な地域への支援のため、JMATⅡを派遣する方針も決定する。

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