勤務医のページ
私は5年前に、金沢大学整形外科の准教授から名古屋市立大学整形外科の主任教授となりました。しかし、待ち受けていたのは悲哀の日々でした。
四面楚歌の同門会総会、私一人だけの教授回診、そして医局員からは人権侵害と訴えられたこともありました。
また、本学の医学生からは「整形外科に進むなら名大(名古屋大学)ですよね」と言われ、愕然としました。
医局の大改革を進める必要があることは明白でしたが、どのようにしたらよいか分からず、途方に暮れました。
そこで、解決策として「新入医局員を増やす」、これしかないとの考えに至りました。
この5年で医局を大改革し、私の就任以前では、年5、6名程度であった新入医局員は、ここ3年は連続して20名以上と、4倍に増やすことができました。
さて、どのような秘策を打ったか? 最近はこのような講演をよく頼まれ、話していますが、この限られた紙面ではその全てを紹介することはとてもできません。医局改革大作戦! その秘策の一部を表に示します。
このように医局を大改革し、今では、"楽しく自由でアットホームな医局"に生まれ変わりました。新入医局員は3年連続20名超えとなり、「人が増えれば何でもできる! 何でもできれば人は集まる!」をモットーに、医局員同士が常に助け合い非常に仲が良いのが名市大整形外科の特徴です。
私が考えるリーダー像を述べます。まず、「己の欲せざる所、人に施すことなかれ」の考えで、嫌なこと面倒なことは医局員や医局長にやらせてはいけないと思っています。嫌なこと面倒なことこそ率先してリーダー(教授)が対応すべきです。
また、医局員がリーダーの顔色を伺いながら仕事をしなければならないようではいけません。
更に、「昔は普通に我々がやってきたことを、なぜあなた方はできないのか」、これは絶対に言ってはいけない言葉です。「自分にとっての当然を他人にとっての当然と思うことなかれ」(昔の当然を今の当然と思うことなかれ)の考え方を常に胸に刻んでいます。
これからの時代の医局教授はどうあるべきか? 私は医局員の太陽でありたいと思っています。
教授は医局の雰囲気を明るくして、皆にエネルギーを与え、皆に光を当てなければならない存在です。
しかし、教授として自分が輝き過ぎては良くないと思います。教授であるからこそ、自己顕示欲や私利私欲を捨てるべきです。主任教授になったならば、更なる自分の業績は必要なく、いかに医局員に光を当てるかを考えるべきです。
教授はどんなにつらくても光を照らし続ける太陽でいなければなりませんので、時には孤独で、忍耐力が必要です。そして、自分の身を削ってでも毎日光り続けなければなりません。太陽が昇らない日は無いんです。
教授に働き方改革なんて関係ないんです。医局員の太陽になれなければ、医局のトップは務まらないと考えています。
私は「日本一威厳のない教授」がつくる「家族のような医局」を目指しています。医局員が自由に発言し、教授の私がそれをおおらかに受け止める、正に"自由闊達(かったつ)な医局"です。
今では、若い医局員が思ったことを私にも素直に率直に伝えてくれる、そんな雰囲気ができています。
「医局に何か大きな目標はありますか?」とよく聞かれます。医局に目標なんて無いです。無くて良いと思っています。
一つの目標に向かって医局員が一致団結したら、多様性なんて無くなるじゃないですか? 医局はあくまでも医局員個々人の夢や目標を支援する存在であるべきです。
その夢や目標には多様性があって当然であり、私は医局員の多様性を求めており、働き方の多様性を尊重したいと思っています。
私にとって「医局員は宝物」です。その宝物をこれからも大切に磨き育てていきたいと思っています。