日医ニュース 第867号(平成9年10月20日)

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勤務医座談会─その3
勤務医と地域医療

 現在,日医勤務医委員会は,諮問「地域医療における医療の機能分化―特に勤務医のあり方─の検討を行っている.今回の座談会は答申作成に向けて,地域で活躍している勤務医の意見を答申に反映させるべく企画したものである.全4回にわたっておおくりする.

《出席者》

日本医師会勤務医委員会委員長・大阪市立住吉市民病院長
濱田 和孝(司会)
宮崎市郡医師会病院外科医長
島山 俊夫
盛岡赤十字病院第一小児科部長
寺井 泰彦
神戸中央市民病院副院長・消化器内科部長
藤堂 彰男
前橋赤十字病院副院長・脳神経外科部長・救急部長
宮崎 瑞穂
本荘第一病院消化器科長
村田  誠
岩美町国民健康保険岩美病院長
渡辺 賢司
日本医師会勤務医担当常任理事
津久江一郎

医療機関連携のあり方

 濱田 次に,医療機関の連携についてですが,それは何も診療所と病院だけでなく,病院と病院,あるいは診療所と診療所,大きな病院,小さい病院などいろいろあると思うのですが,その辺に対してはいかがでしょうか.
 渡辺 小さい病院なりの特色を出し,地域のニーズに合わせて,長期療養型病床を併設したり,痴呆専門の特養を整備するなどの施策が必要だと思います.特に,これからは老人世帯が増え,在宅で家族が面倒を見られないことも当然多くなると思うのです.われわれのような地域の病院は,そういう方をケアしていかないと存在意義がなくなっていくのではないかと思います.
 濱田 村田先生はへき地のようなところへも行かれるから,よけい今のようなことをお考えだと思うのですが.
 村田 後方支援の病院の立場でありながらその診療所でもってやっていると,両方の気持ちがよくわかって,やはり大切なのは人間関係だという気がしました.地域医師会がその役割を担うという立場にならなければいけないと思います.
 濱田 先生のところからより高次へはどのようになっていますか.
 村田 3次救急は800床ある病院でやっています.あとは大学病院,秋田の脳血管センターなどとのつながりでやっています.
 濱田 大学から来ているから,大学とつながりがあるというような関係ではなくて,その地域でどこの大学であろうが,その医療機関と高次のセンター的なところとのスムーズな連携があればいいと思います.
 宮崎 私どもの病院も病診連携ということを考えておりますが,現実にはなかなかそれができていないわけです.日赤は患者さんを取ってしまうからだめなんだということをよくいわれて,われわれも必ず返事を書いて,いったんは返すようにという話をするんですけれども,若い先生は忘れてしまうんですね.どういう経緯で送られてきたのか,どの先生の紹介かと聞いても,あまりよく覚えていないということは,相手の先生の顔がみえないわけですね.病診連携というのは医師同士の信頼,顔つなぎというのが大事だと感じます.
 濱田 そういう意味では,医師会がそういうところを分担していただければいいですね.診療所の機能公開というか,情報をもう少し病院にも与えていただきたいと思います.
 島山 入院,大きな検査,手術という時に医師会病院をうまく利用していただいて,よくなったら,また戻っていただくというような利用の仕方でうまくいっていると思います.
 濱田 大阪のような大都市ですと,日本中から来られて開業されているので,地方から来られて開業された方がお困りなんですね.できるだけ医師会を通じて,病院と連携が取れるようなシステムを作ることに努力しています.
 寺井 そういう意味では,何回かコンタクトを取っているうちに顔見知りになります.うちの病院では,退院時のサマリーを紹介先の先生にファックスで送ろうという取り決めがだいぶ前からあるんですが,なかなかこれが実行できないで困っておりますが,極力そういう方向には持っていっています.
 藤堂 昭和56年に病院が新しく移転したのですけれども,その時点で,医師会連絡室というのを医師会と病院との共同でつくりました.地域の医師会の先生方の紹介をすべて医師会連絡室を窓口にして,それから外来へ振り分ける,あるいは入院を振り分けるというような形になっております.紹介患者の返書などは医師会連絡室がチェックします.本年度より医師会連絡室,ケースワーカー室,看護相談室が1本にまとめられ,地域医療部という名称に変更され窓口を1つにしてより機能的に病診連携,患者サービスが運用されることになりました.
 再診患者の外来は全部予約制を取っているのですが,外来に初診患者が紹介されてきたとき,ずいぶん待たされるという批判がありましたので,医師会から前もってファックスで医師会連絡室へ送っておくと,患者さんは予約診察と同じような形で来られるといったような,いろいろな患者サービスを図る努力をしております.また,システムを作るだけでなく,病診の医師同士が顔見知りになれることが,運用面で大切であるというお互いの認識があり,連携推進会議などいろいろな形の会合を数多く持つように努力しているところです.
 それと,医療情報の公開が,非常に大事だと思うのですが,中央区医師会が「医療情報ガイドライン」というものをつくりました.これには中央区の医療情報が全部入っており,どこの病院がどういう機能を持っているか,医師の専門は何かが1目でわかり,診療所の地図も入っております.これを各医療機関に配り,紹介の便宜を図っておりますが,最近は他区でも順次作成されつつあります.また,医師会でかかりつけ医を案内する窓口をつくっておりますが,そういったことも病院の医師は知らないこともありますので,どういう機能があるかということを,お互いに知るということが非常に大事だと思います.
 濱田 先生のところは大規模病院で,救急も全部やっておられますが,診療所から直接市民病院へ行けば全部すんでしまうと,中小病院との連携はどうなりますか.
 藤堂 実際には,救急の重症患者さんは,中小病院の先生から紹介されることがけっこうありまして,救急の紹介側の比率をみますと,診療所1に対して病院1.5というように,病院からの紹介の方が多いんです.今度は逆に,いわゆる慢性期に達した状態の患者さんはケースワーカー室,看護相談室を通して,どこの病院にお願いできるかを探してもらって,そういう形で逆紹介しているということがございます.
 濱田 有床診療所や50床以下の病院がずいぶん減ってきたということで,いろいろ機能が分化していくなかで,今までのシステムでは生き残れないということで,医療の体制も変わってくるような感じもしております.そのなかで,いい連携をできるだけ取って,患者さんのために役に立つようにしていかなければならないと考えています.


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