日医ニュース 第875号(平成10年2月20日)

勤務医のページ


中堅勤務医の現況と意識
―平成9年2月実施の勤務医現況調査より―

 日医では,昭和58年に勤務医委員会を発足させて以来,常に勤務医の処遇改善,勤務医の入会促進を目標にして一貫した検討を行い,勤務医に関わる種々の問題解決に努めている.勤務医現況調査は,勤務医の現況を把握し,日医の将来に向けての各種施策に資することを目的にしたものである.

調査対象

 今回の調査は,前回調査(平成7年2月)の内容をほぼ踏襲し,調査対象を,1957年,1958年生まれの日医会員に限定した.両年生まれは現在39歳,40歳の働き盛りで,勤務先においては中堅の医師として活躍している層であることから,勤務医の平均的な思考を捉えることができるのではないか,また,前回調査と比較することにより,思考の傾向が理解できるのではないかと考えた.
 日医会員より抽出した全国の500人に調査票を送付し,242人(男性207,女性35)から回答を得た.回答率は48.4%で,前回調査の62.8%に比べ低下している.担当診療科目別では,内科系46.7%,外科系43.4%,その他,でバランスからみて,まずまずの成果といえよう.

労働時間

 1週間の医療従事時間は,48時間以上と答えた者が30.6%で,最大構成比を示している.ただし,前回調査との比較では長時間労働はやや減少の傾向にある(図1).しかし.依然として.このクラスの医師がいかに忙しく働いているかを改めて認識する必要がある.週休2日制は,前回調査より普及し,45.5%(前回41.4%)となっていた.

活動への参加

 学会活動への参加は,58.4%の医師が4学会以上に加入している.また,認定医,専門医の取得状況は,既取得83.5%,取得予定6.6%,予定なし9.5%で,中堅勤務医の学問研究への熱意が感じられた.
 一方,医師会活動に関しては,「検診,健康教育等の地域医療活動」への参加・協力が48.3%にみられたほか,「救急医療活動」23.1%.「学校保健活動」22.3%であった.

日医生涯教育

 日医生涯教育申告書の提出の有無は,「提出したことがある」が34.7%,今後の申告に関しては,「提出予定」が21.9%,「予定なし」が51.7%,「わからない」が26.0%であり,残念ながら,依然として勤務医の生涯教育申告に対する関心は低い.ただ,生涯教育講座等への出席経験は68.2%あり,学会との単位互換性に関する認知は,「あり」が50.8%,「なし」が49.2%であるので,今後の情報の衆知と勤務医の意識の変化に期待したい.

医師賠償責任保険と年金

 医賠責保険への加入状況は,日医医賠責保険が45.0%であり,それ以外は他の施設保険でカバーされている.しかし,前回調査と比較すると,日医医賠責保険の加入者が増加している(図2).
 次に,日医医師年金への加入状況は28.5%であり,前回調査の19.7%と比較すると増加している(図3).
 これらの結果は,医賠責保険,医師年金ともに,勤務医への情報提供が有効であったと考えられ,地域医師会のさらなる努力が必要と思われる.

現状と将来

 現在の職場への満足度については.73.9%の者がおおよそ満足していると回答している.これは前回調査とほぼ同じ結果である.
 このような状況に置かれている勤務医が,開業についてどのように考えているかを示すと,近い将来(2年以内)開業を予定しているのは9.5%であるが,状況によっては開業を考えている者も含めると53.7%になる.一方,「開業しないつもり」を含め,開業の意思のない者は39.7%である.前回調査に比べ,「開業を考えている者」の数が微増している(図4).平成7年度の調査では,「開業を考えている者」は50.6%であったことも併せて考えれば,明らかに,「開業を考えている者」の数が増加していると思われた.

その他

 医療機関の機能分担と連携に関しては,必要性を認める者が93.4%であるが,現在連携を行っている者は68.6%と,意識と現実に差が認められた.また,公的介護保険制度に関しては,「関心がある者」は78.5%であったが,必要性に関しては,「認めるもの」59.5%,「わからない」34.7%と理解が低かった.

まとめ

 中堅勤務医は,非常に忙しい診療活動の傍ら,学問研究への情熱も旺盛である.現在の状況におおむね満足しながら,しかし,将来への不安を抱えている.医療をめぐる状況に関しては,もう少し現状を把握し,理解する必要があると思われた.


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