10数年前から,大阪府医師会勤務医部会のなかで,勤務医の定年後の再就職や,医局人事から独立した就職を望む医師のために,医師会のなかにドクターバンクを設立してほしいとの声があがっていた.他方,診療所の医師からは,突然の発病,学会出席,休暇などに応援医師が派遣できないか,という要望もあった.
理事会での議論の結果,平成3年度の事業計画に「医師会独自のドクターバンク,ナースバンクなどの具体的な検討を行う」との方針が掲げられ,プロジェクトチームが設置された.
理事会では,すでにこれらの事業を行っていた福岡県医師会,大阪府薬剤師会,京都私立病院協会などの実績を参考にして,「将来的には,医療従事者全般を対象とすることも考慮しつつ,当面は医師だけに絞って発足を期す」との方針を決定した.
しかし,社団法人が職業紹介事業を展開するためには,職業安定法第33条および同法施行細則5条の規定に基づき,労働大臣の許可を得なければならず,そのためには,定款上での事業の規定が必要とされた.そこで,理事会の承認を得て,平成5年の定例代議員会で審議を行い,定款の改定がなされた.
その結果,平成5年6月1日に許可を受け,平成5年10月1日に大阪府医師会館内に「大阪府医師会医師無料職業紹介所」がスタートした.
事業内容は,(1)医師についての一般的な求人・求職(2)開業医の急病などの場合の代診医 (3)学会等への出張時の応援医 (4)看護学校などの講師 (5)事業所に必要な産業医 (6)特殊診断医(病理,細胞診・MRI・CT・エコーなど)の求人・求職である.ドクターバンクの運営委員には,厚生福利委員会委員のうちの数名が当たっている.
職業紹介事業を行う事業所は,職業安定法が準用されることになっており,公共職業安定所と同様の事業運営を図る必要がある.したがって,業務運営に関する規定については,安定法に定められた条文が具備されていれば,随意のものであっても差し支えないが,関係法令および通達によって運営されることになる.
平成10年3月末現在での登録者数を表に示した.求職130名,求人165件,237名である.平成5年度から平成9年度までにあっせんした件数は940件,面談に至ったのが268件,就職者数は95名であった.
診療科別にみると,求人件数は内科が64.2%と最も多く,次いで整形外科(15.7%),外科(8.5%)の順となっている.求職者数・就職者数も内科が最も多く,それぞれ50.8%,69.5%であった.
年齢構成別でみると,求職者数では30代が36.9%,40代が30.0%を占め,60,70代は合わせて17.7%であった.就職者も30代が38.9%,40代が33.7%で60,70代は13.7%であった(図).
表 大阪府医師会医師無料職業紹介所取扱状況
|
求 人 |
求 職 |
紹介
(件) |
面談
(件) |
就職
(名) |
件数 |
人数 |
取下 |
人数 |
取下 |
件 |
人 |
5年度計
(10月1日〜) |
27 |
39 |
1 |
1 |
37 |
2 |
13 |
1 |
― |
6年度計 |
30 |
45 |
9 |
15 |
31 |
9 |
120 |
17 |
7 |
7年度計 |
45 |
63 |
10 |
11 |
50 |
13 |
212 |
51 |
16 |
8年度計 |
53 |
85 |
31 |
44 |
36 |
32 |
359 |
99 |
25 |
9年度計 |
90 |
118 |
29 |
42 |
46 |
14 |
236 |
100 |
47 |
合 計 |
245 |
350 |
80 |
113 |
200 |
70 |
940 |
268 |
95 |
10.3.31現在登録数 |
165件 237名 |
130名 |
940 |
268 |
95 |
図 求職者,就職者の年齢別分布
事業内容が周知されるに伴い,求人・求職とも,登録件数,就職件数が次第に増加してきている.しかし,開設以来の懸案であった短期の求人対策,その内でも診療所医師の急病時等の緊急援助などの急を要する求人については,求職者の登録数がまだまだ少なく,現実には対応できていない.
今後,よりいっそうの積極的な広報の展開と,登録者数の増加を目指し,医師相互間の援助体制の充実を図る必要があると考えている.
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