日医ニュース 第885号(平成10年7月20日)

勤務医のページ


―平成9年度松山市医師会勤務医部会アンケート調査より―
「勤務医の現状とその意識について」

 松山市医師会は平成10年4月末現在,会員総数928名,そのうち勤務医会員は526名を数える.
 当勤務医部会では,この4年間に勤務医の実態を知る目的で会員を対象に,「勤務医は医師会に何を望むか」,「病診連携について」,「勤務医の生涯教育について」,そして今回の「勤務医の現状とその意識について」と4回のアンケート調査を実施してきた.その結果については,その都度,市医師会報で報告をしてきたが,今回の調査については勤務医の実態を知るうえで興味ある結果と考えられたので,その要旨を報告する.
 アンケート調査実施日:平成9年4月中旬
 対象:松山市医師会勤務医部会会員
 発送数:547,回答数:256(46.8%)

医師数について

 21世紀初めには,わが国でも医師過剰時代の到来が叫ばれているが,現場の医師の意見としては,わが国全体では32%が医師過剰とする一方で,自分の勤務病院では過剰が11%となり,40%が医師が不足していると答えている(図).これは,勤務医病院での激務の実態を反映するものかもしれない.
 しかし,将来の医師数の増加を病院が十分に吸収できないおそれを72%の医師が抱いていることは興味深い.

勤務病院での勤務の実態

 週平均の勤務時間は,およそ70%が60時間未満の一方で,70時間以上が10%を占めていた.日当直は,だいたい月平均4回以下であった.
 年休の消化については,全然取れない人が4人に1人あり,およそ半数の人が1〜5日であった.
 給与についての評価は,安いとちょうどよいが半々であった.また,現勤務病院については,およそ70%の人が満足,22%の人が不満と答えた.
 勤務医の定年制については,74%強が賛成で,定年の年齢としては65歳にそのピークがあった.
 余暇の過ごし方については,家庭サービスが27%と多く,これは20歳代・30歳代の若い世代で特に多かった.次いでスポーツ,読書,旅行などであった.
 10年後の自分像の問いには,開業と答えたのは7%に過ぎず,大部分は勤務医を続けると回答している.

病院経営と保険診療

 74%の医師は,積極的に勤務病院の経営に参加すべきと回答した.
 保険診療について,93%が日常診療に当たって保険診療を意識しており,現在の保険診療制度に対しては,一応満足55%に対し,不満も44%あった.また,医療費の自己負担分増加については,当然と仕方ない合わせて80%に対し,13%が絶対反対としている.

将来の生活

 公的年金の受給資格をあと何年で取得できるかを知らないが半数を超え,これは当然かもしれないが,若い世代に多く見られた.日医の年金制度加入者は25%であった.
 将来の生活の不安の有無についての設問に対して,大丈夫・まあ大丈夫が70%近くを占めたが,不安と答えたのが22%強あり,その内容としては経済的なことが多く,また若い世代には,転勤(大学の医局人事)などで身分が不安定であることを挙げる人が多かった.
 定年あるいは現役退職後の希望については,医療関係の仕事を続けたい希望が40%の一方,きっぱり止めたいが21%あった.

その他

 医事紛争経験のあるのは,およそ4人に1人.それに備えて医師賠償保険に加入しているのは80%弱,そのなかで日医のものがおよそ半数を占めていた.
 最後に,医師の道を歩んだことについては,約85%の医師がほぼ満足と答えていた.

まとめ

 以上をまとめて,松山市医師会勤務医部会員の平均像を創造してみると,「現在の病院勤務はけっこう激務であり,休みもなかなか取れず,給与もいま少し上がるといいが,現在の病院にはほぼ満足しており,将来も多分安定した生活が送れるのではないか」と考えている.
 余暇があれば,家庭サービスやスポーツをして過ごす.いろいろあるが,医学の道を歩んで良かったという,かなりハッピーな医師像がうかがわれるが….


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