日医ニュース 第893号(平成10年11月20日)

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勤務医のための病院機能評価事業

  今回は,勤務医の方へ病院機能評価事業についてより良く理解してもらい,自分が勤務している病院が,積極的に評価を受けられるために,ここに改めて,評価事業の概要について紹介したい.

日本医療機能評価機構の設立

 「国民が適切で質の高い医療を安心して喜んで受けることは,医療を受ける立場からは無論のこと,医療を提供する立場からも等しく望まれている」これは,わが国で病院を評価する団体として,1995年に設立された日本医療機能評価機構(以下「機構」と略)の設立趣旨の冒頭の言葉である.
 病院を機能という観点から評価しようとするのが,病院機能評価といわれるものである.
 機構の設立は,日医の病院委員会が1976年に設置され,同委員会の報告書(1980年)のなかで医療機能評価に言及したことに始まる.
 1987年には,日医に病院機能評価検討委員会が正式に設置され,中立的な評価組織による第三者評価の必要性が提言された(1990年).
 次いで,1991年,日医は「医療機能評価機構検討委員会」を発足させ,その後,厚生省が設置した病院機能評価基本問題検討会とともに,「第三者評価機構」の設立を提言し,1995年「機構」が設立されるに至ったのである.
 機構は,運用調査(feesibity study)を2年間行った後,1997年,本格的に評価事業として開始した.

評価の基本的枠組み

 評価事業は,基本的には書面審査と訪問審査とからなる審査手法をとっている.
 書面審査は,評価対象病院の病院機能の現状調査と自己評価調査との2つがあるが,いずれも書面で病院側から調査票や設問に記入してもらう方法で回答してもらっている.
 訪問審査は,第三者の立場の複数(通常3人,4人,6人体制)の評価調査者(サーベイヤー)が評価対象病院を訪問して,中立的,客観的に評価・判定するものである.

評価調査者(サーベイヤー)の資格

 評価調査者の資格要件として,(1)診療管理経験者は院長・副院長相当職歴5年を有する者,(2)看護管理経験者は看護部長(総婦長)相当職歴5年,(3)事務管理経験者は事務長相当職歴7年,(4)その他の医療専門職経験者は当該部門管理職歴(例えば薬局長,臨床検査技師長,診療放射線技師長等)5年,(5)病院管理領域の研究者で適切な業績のある者となっている.これらの資格要件を満たした者が,評価調査者研修会(5日間)を履修修了した後,適格者であれば評価調査者として認定している.なお,資格の維持のため,継続研修等が行われている.

訪問審査の実際

 病院機能評価のためには,書面審査よりも訪問審査が重視されるが,書面審査での病院の現状報告内容に対するチェックが行われる他,評価項目に沿った評価審査を行うことになる.訪問審査は1日間(午前9時開始午後5時終了)で行われ,その当日の流れは図に示されるとおりである.

病院機能評価の対象領域

 評価の対象領域は,基本的には6領域からなっていて,(1)病院の理念と組織的基盤,(2)地域ニーズの反映,(3)診療の質の確保,(4)看護の適切な提供,(5)患者の満足と安心,(6)病院運営管理の合理性となっているが,精神病院の評価では,(7)保護と隔離に関する機能が付加されている.また,長期療養病院(療養型病床群,介護力強化病棟等)の評価領域には,(7)リハビリテーションとQOLへの配慮が加えられ,(4)ケアの適切な提供となっていて,病院の種別によってその評価対象領域,さらには評価項目についてきめ細かく配慮され,適切な評価がなされるよう工夫されている.

病院機能評価受審病院からの良い反応

 受審病院,つまり機能評価を受けた病院からは大方好評を得ていて,職員の意識が変わったとか,業務改善に役立った,職員のモラルの向上に役立った,患者が増えた,改善点が明確になったなど審査結果報告書の指摘が病院の今後の改善,向上にたいへん役に立ったと好評を得ている.


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