日医ニュース 第895号(平成10年12月20日)

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平成10年度全国医師会勤務医部会連絡協議会

21世紀の医療

〜勤務医のあるべき姿〜


 平成10年度全国医師会勤務医部会連絡協議会は、台風10号の接近する10月17日長良川国際会議場大会議室において、日医主催・岐阜県医師会担当で開催された。暗雲垂れこめる悪天候のなか、九州方面からの飛行機の欠航などでの若干の欠席者はあったが、299名の参加を得て盛会であった。

 午前10時からの開会セレモニーにおいては、主催者として坪井栄孝日医会長(代理、小泉明日医副会長)、担当県として小坂孝二岐阜県医師会長のあいさつがあり、つづいて岐阜県知事と岐阜市長からの来賓祝辞があった。

特別講演(1)
  

 「世界最長寿国の課題」−日医副会長 小泉 明−

 小泉副会長は特別講演で、「日本人の平均寿命は伸びたが、有病率や受療率などは改善されていない。これからの医師は、一次予防活動にも積極的に取り組む必要がある。勤務医も保健指導や健康指導に貢献する医療の姿を考えてほしい」と述べ、医師会としては高齢社会の人々の生き方を真剣に検討し、先頭に立っていくことが必要であることを強調した。

日医勤務医委員会報告

 池田俊彦日医勤務医委員会委員長は、坪井会長から「医師会の組織強化への勤務医からの提言」という諮問を受けたことを報告し、「勤務医委員会としては、これからの2年間、この問題について真剣に討議を重ね、生涯教育委員会など他の委員会との合同検討会ともあわせて、より建設的な答申をすべく努力してゆきたい」と述べた。

岐阜県勤務医アンケート調査報告

 小林博岐阜県医師会勤務医部会担当理事は、岐阜県内勤務医の現況に対するアンケート調査結果(配布数2000名、回答数882名)について、「勤務時間や医師会との関係では他県よりやや恵まれている」こと、さらに記述式で尋ねた意見では、保険医定年制や医師過剰問題に高い関心を示していることなどを報告した。

特別講演(2)

 「岐阜の蘭医学者 その業績と思想」 −日本医史学会常任理事 杉立 義一−

 杉立義一日本医史学会常任理事は、「21世紀の医療」を考える勤務医に何らかの参考にと、今から200年ほど前の医療の大改革時代に活躍した岐阜の蘭医学者−江馬蘭斎、小森玄良、坪井信道、飯沼慾斎など−の業績と思想について講演し、最後にヒポクラテスの「自然良能」という言葉は、いつの世にも真実であると述べて話を締めくくった。

シンポジウム「21世紀の地域医療への提言」

 安田圭吾岐阜大学医学部第三内科教授を座長として、5名のシンポジストがそれぞれの立場からの提言を述べた。

 土肥修司岐阜大学麻酔蘇生学教授は医学教育の面から、「医学全般に通じる広い見識と高い倫理観をもった医師を養成するため、医学教育は質と量の大変革が求められている」ことを解説した。

 樫木良友岐北総合病院院長は、平成7年より実施している病診連携の実態を報告し、地元医師会との強調と病院勤務医の専門性が必要不可欠とした。

 横尾直樹高山赤十字病院第一外科部長は、へき地中核病院の救急医療を担当する立場から、救急医療の円滑な遂行には地域医師会との連携と行政からの支援が必要であることを強調した。

 松波英一松波総合病院院長は、21世紀に向けて勤務医並びに病院サイドの対応として、勤務医には厳しい現状の認識と経営意識の喚起を、病院サイドには勤務医の病院運営への貢献度の正しい評価を求めた。

 安藤喬安藤内科医院院長は、県医介護福祉委員会委員長として介護保険制度と絡めて在宅医療の充実を求め、後方支援体制確立の必要性を訴えた。

 続いて、フロアを含めたディスカッションに入り、それぞれのシンポジストとの活発な質疑応答が行われた。

 最後に、コメンテーターとして、西島英俊日医常任理事はシンポジストの提言に応える形で、「来年度、大学勤務医を対象とした教育事業をモデル的に行う」ことを明らかにした。また、介護保険制度に関しては、かかりつけ医の意見書の重要性を強調し、「勤務医にも意見書を書いてもらわないといけない」と述べて、このシンポジウムをまとめた。

 


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