長崎県医師会は,開業医と勤務医の連携を重点事項の1つと考え,県医師会勤務医部会と大学医師会の設立を進めてきた.
(日医においても,昭和50年代後半に入ると勤務医問題に関する重要性を認識し,58年4月に勤務医委員会を設けている)
永年の課題であった長崎大学医師会は,平成8年4月1日に設立した.
もう1つの課題であった県医師会勤務医部会は,すでに昭和61年4月に設立され,翌年2月には当時の三島日医副会長および中川福岡県医師会勤務医部会長を迎えて,勤務医部会発足記念講演会を開催していた.
そのため,大学医師会の設立は,部会設立後の勤務医関連事業の最重要課題となっていたのである.
以前から大学医師会については話題には上っていたが,当事者となる大学の意向,大学勤務医のほとんどが加入している地元長崎市医師会との関係等解決すべき問題も多く,なかなか具体的進展をみない状況であった.
ところが,平成7年度に入り,大学勤務の県医師会理事等の熱意により,ようやく大学側の設立機運が盛り上がってきた.
県医師会でも,常任理事会において再三にわたり協議を重ねるとともに,長崎市医師会執行部との協議会に提案し,「長崎市医師会の理解と協力を大前提として大学に協力していきたい」と説明し,おおむね賛意が得られた.
さらに,郡市医師会長協議会・全理事会合同会議および代議員協議会においても,これまでの経緯と現況を報告するとともに,2度目の長崎市医師会執行部との協議会においても引き続き協議を行った.
一方,大学側からは同年11月に,「『長崎大学医師会設立準備委員会』を発足させた.よろしくご指導願いたい」旨の医学部長名の趣意書が,長崎県・市両医師会に提出され,設立に関して大学側の意向が初めて正式に示された.
それを受けた県医師会では,平成8年2月に開催された第140回代議員会において,大学医師会設立を満場一致で正式に承認した.
なお,県医師会代議員の選出に関しては,会長諮問による検討委員会を設けて検討されることとなった.
平成8年3月6日,長崎大学医師会設立総会が開催され,正式に4月1日付で設立することとなった.
設立時の大学医師会会員数は184名であったが,平成11年1月1日現在では,その約2.4倍の442名となっている.
(1)大学勤務医師の組織化
(2)医師会活動への意識向上
(3)入退会手続きの簡素化
(4)郡市医師会費の均一化
(5)情報の享受
(6)医事紛争への対応
(7)医師信用組合の利用
(8)医師年金制度
(9)医学研究助成金 など
(3)(4)入退会手続きの簡素化とは,ローテーションで県内外に異動する医師は,大学に籍があれば大学医師会員のままでよいとした.
異動届の提出だけでよいことになるが,就職の形で大学を出た場合には,退会して地元医師会に入会していただくことになる.
(5)これからは専門分野のみを追求する医師は望まれない.
広く世間に眼を向け,国民のニーズは何か,厚生省は何を考えているのか,世界の医療はどのような方向に動いているのか理解しなければならない.地域医療の一端を担い,病診連携などの効果的な地域医療の確立が必要で,それを支える情報源として医師会を利用すべきである.
(6)医事紛争は増加の傾向にある.
日常診療において,あるいはアルバイト先での紛争は,病院のみならず個人を訴える事例が多くなっている.日医の医師賠償責任保険制度は学会の保険と比較すると,当事者は日常診療には,ほとんど支障がなく解決する.医師会に委任すると,紛争相手との対応を医師会の担当役員と顧問弁護士が行うのである.
(7)医師信用組合を利用する目的で入会してもよい.
市中銀行より手軽に,しかも低金利で借り入れができる.実際に,住宅資金,自家用車購入,その他学資等に利用している.
(8)医師年金制度
厚生年金あるいは共済年金だけでは,受け取りの時点では不十分である.上乗せ分として考えたらどうか.若いときから加入すると掛け金が少なくて済む.
(9)医学研究費の助成
県下会員を対象に公募し,応募者のなかから数名に対し,医学研究助成金を交付する.
日医は国民の医療を守ることを理念に日々の行動を行っている.
打ち寄せてくる社会変化は,わが国の医療制度についても同様に改革が迫られている.将来を担う青年医師・女性医師の積極的な医師会活動への参画が必要で,大学医師会の成長に大きな期待を寄せている.
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