保険医に想う
医療保険制度の改革が叫ばれて久しい.
当たり前のことだが,われわれ勤務医はその制度の下,登録された保険医療機関で診療に当たる保険医である.したがって,現行制度やその改革の動向に関心を持つのが当然であるが,遺憾ながら関心の薄い勤務医が少なくない.
そもそも日々の保険診療を,勤務医の多く,特に,若い医師は,適正に理解していないと考えさせられることが多い.
近年の医療財政の逼迫とあいまって,支払者側によるレセプト審査の厳しさは周知の事実である.
しかし,減点査定の多くは,担当医が保険診療ルールに習熟していれば避け得たであろう事由が多く,このことで頭を痛めている医療機関が多いのが現実である.
保険診療は契約医療であり,その範囲から逸脱する診療行為は契約外行為とみなされ,対価は支払われない.現行の保険診療ルール中,最新医学を学んだ医師として首を傾げ,不満を抱く事項は枚挙にいとまがないが,契約である以上は致し方ないことである.
無論,不備な点は改善を訴えなければならないのであって,その意味でも,保険医である勤務医がルールへの理解を深めることが第一歩である.
二十数年前,医師免許証交付後間もなく,保険医登録証が郵送されてきた記憶が筆者にもあるが,保険医が,わが国の医療保険制度や保険診療を適正に理解する目的で,その登録に際して,認定考査制や認定期間制の導入は一考に値するのではなかろうか.
多くの医療機関では,保険診療について勤務医への指導を繰り返している.勤務医部会でも保険診療研修会を定期的に開催しているが,肝心の若手医師の参加が少ないのに腐心しているのが現実である.
若手医師を派遣する立場にある大学でも,卒後教育の一環として,「保険医」に対して実効ある保険診療教育を望みたい.
(東大阪市立総合病院副院長 波多 丈)
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