日医ニュース 第915号(平成11年10月20日)

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勤務医座談会その1
医師会の組織強化

 日医勤務医委員会は,坪井会長からの諮問「医師会の組織強化への勤務医からの提言」についての検討を行っており,現在,答申作成中である.今回の座談会は,地域で活躍している勤務医の意見を答申に反映させるべく企画したものであり,3回に分けて掲載していく.第1回目は,「勤務医の医師会入会促進」をテーマに話し合った.

池田 本日は,お忙しいなかをお集まりいただきまして,ありがとうございます.「医師会の組織強化」というテーマで座談会を企画しましたので,よろしくお願いいたします.
西島 日医は,医師が安心して医療を提供できる環境づくりを行っておりますが,今日は,勤務医の先生方のさまざまなご意見をお伺いし,それを施策に反映していきたいと考えております.

勤務医の医師会入会促進

池田 医師会の組織強化ということでは,組織の大きさ,構成員の多さが一つの力になろうかと思います.
 そこで,はじめに,勤務医の医師会入会問題について発言をいただきたいと思います.
森下 やはり,医師会の必要性が勤務医と開業医では違うし,立場もまったく違うという感じがします.
 開業医の場合は,個人事業主という部分が非常に大きいのですが,勤務医の大部分はサラリーマンで入会の必要性が少ない.単純に入れといっても,若い人たちはなかなか入らないというのが現状ではないでしょうか.
三宅 勤務医が五〇%を超えるような状態になってきましたが,表から見えてくる活動のほとんどが,開業医の立場の日医の活動です.勤務医が医師会に入会すると,どういうメリットがあるのか,また,勤務医の果たすべき役割と義務が不明確であり,この問題を日医で明確にすべきだと思います.
 現在,日本の医療が将来どうあるべきかを考える大切な時期に来ていると思うのですが,それを考える機関がほとんどありません.本来,大学がそういう講座をつくり,考えるべきです.その場で将来を見据えた日本の医療は,勤務医がつくっていく義務があるのだということをアピールしていけば,やりがいのある医師会活動ができるだろうし,卒業して医師免許を取れば,医師会に入る形になるように思います.
三橋 日常診療をしていて,医療政策など矛盾がいろいろあることに気が付きます.私は泌尿器科ですが,例えば,医療費の点数など,実際,おかしいと思いながら患者さんの診察をしています.それを是正するため,厚生省,政府と交渉していくのは,やはり日医で,力の源は組織力であり,大きくして交渉力を高めることができると考えます.
 それから,勤務医をしている若い先生方には,病院のなかで医師会のいろいろな勉強会などをやって,関心を持っていただくことが必要です.また,医師会に入りやすくするためには,勤務している病院である程度の医師会費の補助をすることも必要だと思います.
 そして,例えば,勤務医の老後の生活および仕事の問題などを日医で検討して,ある程度の方向性を打ち出していくことも大事だと思います.
武内 座談会に参加するということで,病院の先生方に聞いてみたのですが,私たちが卒業したときは即入るものだと思っていましたけれども,意外と医師会に入会している方が少ない.何か困ったことがあると,いずれ医師会が何とかしてくれるだろうという依存体質は非常にあったと思います.実は,もっと私たち勤務医が積極的に医療行政などに関心を持っていかなければならないのに‥‥‥.
 私が医師会に入ったときには,トラブル,医療過誤の問題など,医師会に入ってさえいれば,何があっても助けてくれるという感覚でいましたので,最近,入会していない先生方のことを聞くと,少しびっくりしたというのが現状です.
 病院内でもう少し医師会への理解というか,医療行政などに関心を向けるような努力をしていかなければならないと感じております.
杉山 私のところは国民健康保険病院で,地域医療,つまり,部分的には開業医とほとんど同じような内容の医療をやっていて,来年施行される介護保険対策も大きな課題です.ですから,私自身,専門医とは何の関係もないケアマネージャーの資格も取りましたが,そういう地域医療のなかでは,やはり医師会との関係を密にしないとやっていけない部分があるのですね.
 鳥取県では,県医師会,地区医師会の会費は勤務している病院が負担することで,自動的に会員になりますが,日医に加入するとなれば,結構な会費が要るわけです.そうなれば,どういう目的,意義があるのかという問題と,入会の手続き,会費の問題をどうするのかという問題が解決できるような方法をとらないと入会促進策は取れないだろうと思います.
 日医の場合,やはり,会費の問題が非常に大きく,例えば,県医師会の産業医部会などはそれなりの経済的なメリットもあるのですが,日医に加入しても経済的なメリットは何もないわけです.
 しかし,日医も生涯教育,救急対策,診療報酬をどうするかというような大局的な面で考えれば,勤務医は関係ないとはもちろんいえませんし,逆に大いに今後,日医のいろいろな活動のなかで,勤務医が働いていかなければいけない部分は,確かに多いということが客観的にはわかります.
 ところが,その勤務医の声を反映させるべき代議員,理事の数ということになると,非常に少ない.問題はそこなんですね.ですから,会費を払っていても,自分たちの声が反映できる場があまりないとなれば,内容的には十分働く余地はあります.
 また,勤務医が大いに関係しなければならないこともわかっているのですけれども,そこの問題が解決できない限り,若い医師に,日医に入りなさいということはちょっといえないのです.
石川 東京都医師会で大学病院勤務医にアンケートを行いましたが,その結果をみても経済的なメリットはありません.
 若い先生方のメリットというのは,医師国保に入って一部負担金が少なくてすむということですが,このメリットは非常にある.ところが,これを知っている人が意外と少ない.医師国保のメリットを発表するぐらいしか,日医の会員を増やす方法はないのではないかと考えます.

出 席 者
(司会)池田 俊彦 日本医師会勤務医委員会委員長・福岡市民病院院長
石川 幹夫 東京医科大学心臓血管外科講師・東京都医師会勤務医委員会委員長
杉山 長毅 国民健康保険智頭病院院長・鳥取県東部医師会勤務医部会副会長
武内 健一 岩手県立中央病院診療部次長兼呼吸器科長
三橋 公美 札幌社会保険総合病院泌尿器科部長・札幌市医師会理事
三宅 忠夫 大阪府立病院免疫リウマチ科部長・大阪府医師会勤務医部会常任委員
森下 英夫 長岡赤十字病院泌尿器科部長・新潟県医師会勤務医委員会委員
西島 英利 日本医師会常任理事


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