平成11年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
茨城県勤務医
アンケート調査について
|
平成十一年度全国医師会勤務医部会連絡協議会−メインテーマ「打ち寄せる医療変革−勤務医の果たすべき役割」−が,昨年十一月六日に茨城県水戸市で開催され,特別講演や医療変革に関するシンポジウムに加え,茨城県における勤務医の実態や意識に関する調査結果が報告された.調査は,県下の勤務医に対し,昨年四月から五月にかけて配布数三千九で実施され,回収数・回収率はそれぞれ千百十一,三六・九%であった.その内容には,例年の協議会で報告された継続的内容のほか,メインテーマに沿った質問も加えられた.このなかで興味ある調査結果を提示し,今後の勤務医として考察し,対応すべき役割について考えたい.
将来の開業予定では,「近い将来に開業予定」が二・五%,「未定であるが開業希望」五・六%,「将来の情勢により開業を考える」二四・五%に対し,「開業の意志はない」が四五・九%であった.
しかし,現在,毎年七千人以上の新規医師の参入があるとされており,最近の病院数,病床数の持続的減少の動きから考えると,今後,勤務医枠の大幅な拡大が図られなければ,一つの大きな方向として医師は地域での開業を迫られるとも想定される.実際,現在でも年四千件以上の新規開業(再開も含む)が報告されている.
この観点からも,勤務医も病院組織のなかでの活動のみならず,開業医との連携や役割分担の推進について真剣に考え,地域医療のさらなるレベルアップのため,努力していく必要がある.
日医では先に,「診療情報の提供に関する指針」の完全実施を本年一月からと決定しているが,カルテの開示は勤務医にとっても一大関心事に違いない.
今回の調査では,カルテ開示について,「賛成であり,現状でも開示可能である」が三二・三%,「開示先の限定やカルテの整備等の問題を解決して賛成」が五六・七%,「原則反対」が九・五%であり,消極的賛成が多いことを示唆している.これには,「現状で開示に耐えうるカルテであるか心配である」との危惧が大きくかかわっているに違いない.
今後,法制化の動きも再燃することが予測され,早急に外来・入院を問わず,カルテの標準的記載法,電子カルテ等の導入による効率化などを検討し,整備する必要がある.この際,多忙で限られた診療時間も考慮に入れて実効性の高いシステムを構築するべきである.さらに,診療録管理室を新たに開設し,精度を高く運営するには原資問題が発生するし,開示に足るカルテ作成に対する対価の議論も巻き起こってくると思われる.また,カルテ作成に対する卒前・卒後教育もきわめて重要な課題である.
しかし,それよりも強制的な開示を迫られる事態にならないよう,日頃より診療情報を患者側に十分提供し,医師・患者関係を良好に維持しつつ,診療を進めていく姿勢が当然であり,最も重要である.
クリティカルパスに関する質問では,「知っている」が四七・九%,「知らない」が五一・四%であり,また,知っている者に対する「自施設でのパスの導入は」の問いでは,「賛成である」が六九・四%,「反対である」が二三・一%であった.この結果は,病院におけるパスの普及状況を考慮すると予測される数値であろう.
米国におけるパスは,入院期間の短縮や医療費の削減を主眼として導入されてきたが,合併症のない限定された疾患,検査などに対しては医療者側,患者側にも有用な手法と思われる.パス手法による診療計画とこれまでの診療を比較することにより,また,他施設のパスとの比較により診療を効率的に運用すれば,医療費の効率的使用に繋がると考えられる.
しかし,画一的に適応するのは大いに問題があり,医療の質の確保が必須である.その保証がなければ,患者側からのクレーム増加を招来する危険性が高い.
DRG/PPSの内容については,「知っている」が二九・三%,「知らない」が六八・九%で,年齢ごとで検討すると「知っている」は,二十代で一〇・九%,三十代で二六%,四十代で三三・七%,五十代で四五・九%,六十代で四六・七%であり,若手医師の認知度がきわめて不良であった.また,その導入についての問いでは,「反対である」が四八・三%で「賛成である」の四四・六%を上回った.
現在,日本版DRG/PPSが全国十病院で試行中であるが,勤務医もその内容を十分把握して,まず,患者のための医療の視点で対処していくことが肝要である.
以上の調査結果は,医療変革の動きに無関心である勤務医が少なくないことを示している.今後の医療変革の行方により,医療の質が十分確保されるのか,また,自分たちの勤務状況はどうなるのか,あるいは医療経済はどうあるべきか,勤務医は多方面から考慮し,発言していかねばならない.そして,その発言力を強化するには,勤務医の組織化の拡充がきわめて重要と考えられる.
日医ニュース目次へ
勤務医のコーナーへ