日医ニュース 第921号(平成12年1月20日)
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産業医,特に,専属産業医は勤務医が多い.産業医は,通勤から業務現場までを活動の場としている.そして,正社員をはじめ,パート社員や派遣社員の健康管理,作業・環境管理を行う.
事業規模は,大企業から中小・零細,自営業まであり,全国組織の企業もある.それらは,営利企業や公益団体である.安全・衛生,健康管理の法令は,おのおの団体ごとに異なっており,しかも,業種によっては業種特性があり,また,社会特性・事業場特性がある.その特性については,長年の慣習,地域性,事業者・上司の指導・監督,さらには景気や世相に左右されやすいのである.
健診個人票の管理が十分でないと思われる事業場では,個人票作成(産業医の意見)に細心の留意をする.発行文書を作成する時には,請求者,受取者,時に利用目的などの確認を要するのである.
産業医には,事業者・社員との意志が通じあえるように,普段からのコミュニケーションが必要である.特に,一九八一年を国際障害者年として以来,障害者の職場適応の拡大・就業支援が強く求められている.
一般的なこととして,職域の医療施設が閉鎖の傾向にあり,社員は地域の医療施設で受診している.受診者は,治療医におまかせ型から治療協力型が増している.しかし,この自立的な受診者は,実は自分で判断する情報整理ができなくて不安状態になっているように見受けられるのである.
かつての先輩臨床医が,診療費領収証の印紙添付のことで最高裁の判断を仰ぎ,印紙不要となった.この判例は,具体的な医師としての規範を現在に伝えているのである.
医師会名簿には診療科目のみ記され,他は無記になっている.医師の仕事が広がり,より専門化している現状ゆえに,診療科目以外の名称記載を望む勤務医である.
(産業医・健診医 池田征一郎)