日医ニュース 第925号(平成12年3月20日)

勤務医のひろば

求められる勤務医像―私見―

 本年四月に予定されていた医療制度抜本改革は,諸般の事情により再来年四月までの先送りとなったが,医療サービスを提供するわれわれの立場としては,いかにして病院の質を向上させるかが,常に念頭におくべき重要なことであることはいうまでもない.
 良質な医療は,安定した病院経営の基盤の上にある.また,病院の質を左右する最も重要な鍵を握っているのは,そこに働く医師である.医師の採用は,ほとんどの病院で大学の医局からの派遣という形でなされ,二〜三年で交替するのが現状である.
 病院勤務医としての医師はどうあるべきか,また,どういう医師を病院が求めているかについて,院長の立場から私見を述べてみたい.
 まず第一に,病院の設立理念や院長の運営方針を理解したうえで,診療にあたってもらいたいということである.患者の視点に立った医療が求められており,昔ながらのパターナリズムによる独り善がりの独断的医療は時代遅れである.
 第二に,医療の質と経済性を保ち,良質な医療をしてもらいたい.とかく勤務医は,「病院には算術は無用」などと批判する傾向があるが,安定した経営基盤なしには医療機器の購入もアメニティーの充実も計れない.医療保険制度を十分に理解し,病院運営にも積極的に参加すべきと考える.
 第三に,医療は医師一人だけで行うものではなく,他職種の全参加によるチーム医療であるということを認識することである.
 勤務医は,病院において運営の原動力であり,他職種に与える影響も大きく,病院のリーダーでなければならない.修練を重ね,心豊かな人間性と崇高な倫理観を持ち,患者から信頼を得た時,本来の医療の目標に達したと考える.
 医師の生涯教育が叫ばれて久しいが,最後に私の座右の銘を紹介する.「小にして学べば,即ち壮にしてなすことあり.壮にして学べば,即ち老いて衰えず.老いて学べば,即ち死して朽ちず」(「言志四緑」より)

(済生会福岡総合病院院長 岡留健一郎)


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