日医ニュース 第927号(平成12年4月20日)
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岩手の県立病院は,病院数二十八,総病床数六千三百床の全国に類を見ない規模である.
県立病院の前身は,昭和初期,貧しく医療に恵まれない状況のなかで,「無医村に医療の灯を」と希求する人々が県内各地に開設した協同の医療施設である.これら施設の運営は困難を極めたため,県営に移管となり昭和二十五年十一月,岩手の県立病院が発足した.
現在は,創業の精神である「県下にあまねく良質な医療の均てんを」を基本理念に据え,地域医療の確保のため,医療サービスの質的充実を図りながら医療活動を行っている.
岩手県は,四国四県に匹敵する広大な県土を有している.このため,二十八病院を,(1)センター病院:全県域を対象とした高度・特殊・先進的医療機能と併せ,教育・研修・医療情報機能など県立病院の中心機関となる施設(一病院:県立中央病院)(2)広域中核病院:二次保健医療圏を対象とした総合医療機能のほか,特殊・専門医療のセンター的機能と併せ,教育・研修機能,地域支援・連携機能を有する連携ネットワークの中心となる施設(九病院)(3)地域総合病院:一般総合医療のほか,特殊・専門医療と併せ,地域ケア支援機能などを有する施設(七病院)(4)地域病院:地域を対象とした一般医療機能と併せ,地域ケア支援機能などを有する施設(九病院)(5)精神病院:全県域を対象とした精神医療の中核となる施設(二病院)−に類型し,地域全体として有効・適切に機能する医療システムを確立すべく努力している.
近年の医療経営の困難さは,岩手においても同様であり,多くの病院が累積赤字を抱えているのが現状である.
そのようななかで,カルテ開示,DRG/PPSの導入,クリティカルパスの導入など医療を取り巻く環境は流動的である.これらの種々の課題に対し,前向きに積極的に対応し,勤務医として,何をなすべきであるのか,そして,二十八病院全体として何がなせるのかを真剣に考えるべき時であると思われる.
(岩手県立中央病院副院長 高田 耕)