日医ニュース 第931号(平成12年6月20日)
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年に数回,病院経営セミナーに勉強に行く.厚生省の政策を先取りせよと教えられるが,政策に疑問点も多い.その大本は,医療の原則からの逸脱や医療の現場―特に地域特性―の無視にある.厚生省のあまりにも細かいところまで決めた統一規格政策のため,医療過疎とは別の医療低下地域が全国に広がっているのではないか.
病院の機能別化:改定方針(入院評価,定額制の拡大など)により,人口一万程度の町村には,小さな療養型病院か有床診療所しかできない.入院を要する急性肺炎などは,隣町,あるいはもっと遠くの中・大病院に行かなければならなくなる.これは,住民から支持されるか.小病院でも,病室あるいは病床(病状)単位に点数体系が選べるようにしないと,政策的に医療レベルが低下させられた地域が今後増えるのではないか.
外来/入院比率:紹介率とともに分化の指標として登場した.しかし,山や海あるいは交通事情により,近くに診療所が少ない地域の病院は,その代わりもせざるを得ない.医師過疎の地域では昔からそうなのであり,少ない医師の効率的活用ともいえる.そうでない区域と一緒に扱うのは公正でない.
院外処方:すでに本来的な意味で医薬分業をしている病院が,なぜ,経済誘導により,院外処方に追い込まれなければならないのか.一般の患者は,よけいな金と時間的・肉体的負担を強いられる.日米協議で日本が約束したとかいわれる分業率三〇%(?)はすでに超えているではないか.消費者の利便と安価性とは,古今商売の王道であり,二十四時間営業店で納税などのサービスが行われる時代に時代錯誤ではないか.
介護保険:負担が重荷でサービスを辞退する人がかなりいる.教育して都会に送り出した子どもから顧みられない,田舎に残った老親には,たとえ米や野菜,家や土地や山があっても,現金はない人が多いのではないか.
十分な資料を元に,国,マスコミに発言できそうな日医総研に期待している.
(佐渡厚生連佐渡総合病院長 服部晃)