日医ニュース 第939号(平成12年10月20日)
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またか!と思うほど,医療ミス・事故の報道が続いている.そのなかで,「医療ミス」と「医療事故」が混同されているようである.
「医療ミス」は,薬の処方量のミス,患者の取り違い,血液型の間違えなど,どうしてそんなことが!というようなことが多い.そして,多くは確認ミス,チェック体制の網の目をくぐり抜けた事例である.
ここで戒められるべきは「慣れ」であり,築かれるべきはチェック体制であろう.
一方,「医療事故」は通常の医療行為のなかで,程度の差はあれ,起こりうる可能性をはらんでいる.医療は,三途の川を渡りそうな患者を,何とかこちらの岸に留めようという側面がある.患者や家族の期待どおりには,必ずしもいかない.そこに,期待と現実のギャップから,主治医や病院への不信が醸成されてくる.必要なことは,医療行為の持つリスクや達成の可能性について,事前に十分な説明を行い,同意をうることであろう.いわゆるインフォームド・コンセントの徹底である.
にもかかわらず,さまざまなクレームが寄せられることが目立ってきている.医療への期待度が高くなっている表れの裏返しともいえるが,主治医のコミュニケーションの取り方に問題があることも多い.
最近,投書,電話などで目立っているのが,医師の言動に対する苦情である.こんな場合,すぐ医学教育が問題とされるが,私は卒前教育より卒後早期の教育が,より重要であると考える.特に,卒後二,三年までの指導医の診療姿勢は,その医師の一生に影響する.研修制度の必修化が確実な方向であるが,技術のみならず,基本的な診療姿勢,広く接遇といわれる患者への接し方についての修得も視野に入れるべきである.
研修医を預かる現場の医師の責任は重い.そのためには,指導医に対する待遇を抜きに制度を語ることはできない.
(秋田市赤十字病院長 宮下正弘)