日医ニュース 第949号(平成13年3月20日)

勤務医のひろば
勤務医の質の向上の一案


 勤務医としての役割は,単に患者をみて診療を行うのみならず,若手医師を育ててゆく重要な使命を帯びている.
 若手医師の育成は,その病院のレベルを上げてゆくのみならず,日本全体の医療レベルを向上させることになる.しかし,わが国における大きな問題の一つは,優秀な指導医の不足である.
 わが国の医学教育では,卒業教育を含めて,若手医師を教育するということを,しっかり規定していない.
 個人的な指導として,できることは診療録をしっかりと書かせることである.正しい診療は,十分慎重にとられた病歴と身体所見とそれを裏づけるのに必要な検査による.また,そこから得た診断と治療のプロセスが記載されているべきである.これらを毎日,若手医師とともにレビューすることにより,彼らを教育できるし,また,指導医自身にとっても,ディスカッションしてゆくと得るべきところが大きい.
 指導医は,決して独善に陥ることなく,分からない点は文献をあたり,コンサルテーションを行い,謙虚な態度で臨むべきである.
 病院としては,医療情報が十分に得られるような環境づくりに取り組むべきであろう.それには,インターネットなどを含めた,図書室の整備を推進すべきであろう.
 また,入・退院カンファレンスや死因検討会などを行い,決して独断的でない,普遍性のある解決策へともってゆくようにする.
 こうしたなかで,教育を受ける側と教育する側との相互評価を行い,フィードバックすれば,さらに教育は高まってゆく.

(東京都済生会中央病院副院長 北原光夫)


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