日医ニュース 第971号(平成14年2月20日)

勤務医のひろば
ネット相談とセカンド・オピニオン


 昨今,患者さんは,インターネットで広くたやすく必要な情報を得ることができ,また,患者さん同士による情報の交換も活発に行っているとのことである.インターネットによる医療相談(ネット相談)もボランティア活動として進められているが,これにはメリットとデメリットがある.
 まず,前者については,ネットの持つ匿名性と簡便性であろう.現在,治療を受けている医師に相談をためらうことでも,姿を差し出すことなく相談でき,そして,居ながらにして情報を得ることであろう.
 後者については,前記のメリットがそのままデメリットになっている.常識をわきまえない不用意な相談や,簡便さのあまり多数の相談事例に対処できないという厄介な問題もある.ネットによる国民のモラルや社会的なルール不在のため,深刻な事件が起きているが,ネット相談でも,これらの点が今後解決されるべきであろう.
 患者さんが,自己の医療に対して決定権を持ち,その権利を主張するという,患者中心の医療が進められつつある.そのなかでは,情報開示とインフォームド・コンセント(説明―了解―同意)はきわめて重要なことである.自己の医療に決定権を持つ患者さんが,カルテの情報を共有し,十分な説明を受け,納得のうえで決定するために,ネット相談が生かされることも可能であろう.
 セカンド・オピニオンとは,自分が受ける医療の内容を第三者に評価してもらうことである.このシステムは,第三者の客観的評価に委ねるという,医療の開放性の面と同時に,受けている医療がその評価に耐えうる医療水準であるかという面に関連してくる.米国では,すでにこのシステムが確立され,保険でその費用が賄われている.
 わが国にこのシステムが導入されるには,かなりの年月を要するのであろうが,これは医療の質を大きく高めることであろう.患者さんが,自己の医療に関する自己決定権を発動するのに,ネット相談が大きな力となることであろう.

(鳥取大学神経精神医学教室教授 川原隆造)


日医ニュース目次へ