日医ニュース 第989号(平成14年11月20日)
大学勤務医の動向 |
大学の勤務医には,自分の仕事だけに関心を持って,医学医療変革の波に無関心でいる者,大きな組織のなかで安穏と生活している者,医師であれば一般社会で認めてくれると安易に考えている者,講座あるいは医局がなくなれば医師の教育や派遣が円滑に進むという,現状を知らない短絡的で無責任な発言に困惑と怒りを感じている者などさまざまである.
現時点では,彼らが危機感と緊張感を持って,共同の目標に向けて行動していくことは困難である.唯一,大学が独立行政法人になる時がチャンスである.
勤務医の採用に当たっての留意点は,どこの大学を卒業したかではなく,どこの施設で初期研修,専門研修を受けたか,どのような資格を取得しているか,また,実力,実績を有しているか,その医師をだれが保証し,推薦しているのかである.
一方,研修を受ける医師には,その施設の設備や研修プログラム以上に,指導に当たる医師の質と量が重要である.それは初期研修で受けた指導医の知識,技術だけでなく,人間性に大きく影響を受けるからである.
研修病院で指導に当たる医師および管理する院長には,大きな負担と責任が生じる.したがって,大学および医師会の協力支援体制が必要になる.研修医に勤務医としての自覚,医師会活動の重要性を早期に認識させる対策を具体的に明示することである.
例えば,加入しやすいように医師会費を考慮する,あるいは,医師会で企画する事業に参加し,一定以上の単位を取得した者に対して,援助,報奨を与える.臨床指導および医師会活動に熱心な施設に対して,協力,支援を行う.また,医師会のホームページの充実を図り,内容のある広報および情報提供を行うことである.
大学の医局運営は,上に立つ者が若い医師の要望を把握し,理解したうえで適切に指導しない限り,若い医師は付いてこない.このことは,医師会活動においても同様といえる.
(札幌医科大学医学部麻酔学講座教授・附属病院長 並木昭義)