日医ニュース
日医ニュース目次 第1007号(平成15年8月20日)

勤務医のひろば

医師会活動における勤務医の役割とその意識の変遷

 最近,医師会への加入に際して,「メリットがないから加入したくない」という声が聞かれる.これは医療における専門分野に携わる者として,あまりにも無責任な発言ではないだろうか.医師会の活動の最も重要な役割は,日本の医療を好ましい方向に導き,安心で信頼のおける医療を国民に提供するために努力することではないだろうか.この崇高な目標に対して,協力することはすべての医師の義務であろう.
 日本国憲法において,権利主張が認められ,責任を果たすことがおろそかになっていることや,教育基本法にも子どもの権利は認めているが,公に対して何をすべきであるかは盛られていない.これに輪をかけたのが,戦後の経済発展により核家族化が急速に蔓延し,老人の孤立化が起こり,これによって文化の断裂を来たした.この結果,従来の集団主義的考えから利己主義的な考えに代わってしまった.
 欧米では,一神教(キリスト教,イスラム教)が主体をなすため,絶対の神と個人が一対一の関係で契約を結んでいる.法律で規制されなくても,宗教的道徳の規制によって,義務に対して責任を果たすのは当たり前のことである.
 しかし,日本のような多神教においてはこのような義務はなく,各々の解釈を尊重することが基本になっている.したがって,欧米では個人主義は確立できるが,日本では利己主義になってしまうのである.
 開業医は個人で事業を背負っているため制度改革に敏感であるが,勤務医は今まで非常に関心が薄かった.今後は勤務医の目から見た,より良い医療制度を提言し,正しい医師会活動が確立されるよう努力することが望まれる.
(大阪府立病院免疫リウマチ科部長 三宅忠夫)

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