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第1017号(平成16年1月20日) |
平成15年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「今,求められる医療」
―質・研修・評価―をテーマに
平成十五年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催)が,平成十五年十月十八日,奈良市で「今,求められる医療」―質・研修・評価―をメインテーマに,県内外から約三百十名の勤務医部会関係者が参加して開催された.
開会式で,主催者の坪井栄孝会長は,「現在の医療がどう変わっていくか,未知数の部分が多くあるが,勤務医の先生方と共に日医の会員が一丸となって,今,われわれが国民のために日本の医療を守らなければならない」と述べた.
担当県の有山雄基奈良県医師会長も,「勤務医,開業医の区別なく一致団結すると共に,日々それぞれの地域で,献身的かつ誠実な診療活動を行い,国民が安心することのできる医療を提供していく必要がある」とあいさつした.
特別講演(1)
坪井会長が,「だから財源論に踏み込まざるを得ない」と題して講演した.(写真)
そのなかで,「われわれは,社会保障は平時における国家安全保障であるということを主張すべきで,そのうえで医療や福祉に関する財政の配分機構に踏み込んでいく必要がある」と強調した.
日医勤務医委員会報告
池田俊彦日医勤務医委員会委員長より,委員会の報告があった.
坪井会長の諮問「勤務医と医師会活動」に対して,現在答申をまとめる段階であるとし,答申案の骨格が示された.
また,勤務医の会員数推移や医師会活動への参画状況などについても報告があった.
奈良県勤務医アンケート調査報告
奈良県勤務医アンケート調査の結果を,山本博昭奈良県医師会理事が報告した.
調査は,奈良県内勤務医千七百六十六名に配付し,千百三十名から回答を得た(回収率六四%).これまでの継続的な調査項目を中心に,卒後臨床研修や女性医師に関する問題等を追加項目として調査を行い,勤務医に関わる現況が示された.
次期担当県あいさつ
次期担当県である柏木明熊本県医師会長が,平成十六年度全国医師会勤務医部会連絡協議会を十一月六日に,熊本市で開催予定であると案内した.
ランチョンセミナー
第一会場では,網干善教関西大学名誉教授が,「大和の古墳文化―歴史の中で学ぶこと―」と題して,第二会場では,沖浦和光桃山学院大学名誉教授が,「野巫(やぶ)医者の源流をめぐって―旅する『寅さん』の実像―」と題し,それぞれ興味深い講演を行った.
教育講演
上原鳴夫東北大学医学部国際保健学分野教授が,「パックス・メディチナを超えて―医療の質保証における医師の役割とシステムの役割―」と題して講演した.
上原教授は,昨今の医療事故の問題は憂慮すべきとしたうえで,「患者さん本位の医療」を目指すため,日本的医療質管理モデルの構築中であることを紹介し,医師会の取り組みへも期待を寄せた.
特別講演(2)
吉田修奈良県立医科大学学長が,「私の医学教育原論」と題し,講演した.
このなかで吉田学長は,今西錦司先生の教育論に大変共感をもっているとしたうえで,特に,「教育というものは,教えるほうにも教える意欲があり,教えられるほうにも教えられる意欲があってはじめて成立する交互作用的営みである」ということを強調し,それが,「教育の基本である」と述べた.
シンポジウム
シンポジウムは,「卒後臨床研修に求められるもの」をテーマに,まず,星北斗常任理事の日医の立場から,基調講演を兼ねた講演があり,その後,中島正治厚生労働省大臣官房審議官,吉岡章奈良県立医科大学附属病院長,郡義明天理よろづ相談所病院総合診療教育部長,赤井靖宏奈良県立医科大学第一内科助手,大澤真木子東京女子医科大学小児科主任教授が,それぞれの立場から講演した後,討論が行われた.
討論では,医師確保の問題や女性医師をめぐる処遇問題などがテーマとなった.二年間の研修後の選択をめぐって,星常任理事は,再度マッチングする仕組みとして,一部の都道府県医師会が運営している医師バンクの全国版など,制度の多用化に期待を寄せた.
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