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第1021号(平成16年3月20日) |
36年目のインターン
昭和四十一年の秋,来春に卒業を控えた私たち六年生は卒業試験どころではなく,既成のインターンを拒否して,大学病院と関連病院を二年間でローテートする自主研修を計画し,大学側と交渉の真っ只中であった.
この無謀ともいえる研修計画は紆余曲折を経て,大学に認めて(?)もらい,大学病院で研修する仲間を関連病院で研修する仲間が経済的に支えながら,自らの国家試験受験を賭して研修制度の改善を訴え続けた.そして,昭和四十三年インターン制度の廃止を見届けると,秋の国家試験を受験して運動は終焉へと向かった.
その後,大学病院においては,医学細分化の流れに乗って専門医教育が優先されたため,医師の総合診療能力の低下が社会的に指摘される一因になった.一方,卒後研修を重視する民間病院では,米国式の研修システムを導入して卒後臨床に高い評価を受けた.このシステムが,今回の制度化の雛形になったようにみえる.
そして,三十六年を経てリニューアルされた制度の内容はどうであろうか.全病院の研修プログラムは公開され,学生は自由に選択できる.さらに,全国レベルのマッチングにより研修病院が公平に決定される.処遇は大幅に改善されて,月額三十万円の手当と研修専念が保証された.病院によっては宿舎まで完備されるという.いずれをとっても旧制度と比較すれば雲泥の差がある.
しかし,プログラム内容と指導医の質向上は今後の課題であり,この制度の真の評価が決まるには数年が必要であろう.それにしても,制度制定過程で学生の姿がまったく見えなかったのは意外であった.
私は,今三十六年前にタイムスリップしてマッチングに参加できるなら,どの施設で研修を受けようかとネットサーフィンする昨今である.
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