日医ニュース
日医ニュース目次 第1025号(平成16年5月20日)

勤務医のひろば

勤務医の実態と広報活動

 勤務医は,若いころは自己研修のために大きな病院での研修を望み,安い給料で夜中まで働くのが通例である.そのため小さな科を希望する医師は,スーパーローテートが終了してから研修を開始することになり,その科の研修期間が約二年遅れ,一人前の医師としての資格(専門医)の取得も遅れる可能性が出てきた.
 その間,大病院では,後期研修医扱いとして,やはり安い賃金で働くことになる.逆に大きな病院は,彼ら若い労働力を安い賃金で雇用することで,やっと採算を合わせているのが現状である.
 アメリカでは,後期研修医がすべての権限を持った医療を行っており,実力をつけ,研修が終了すると専門医の資格を取り,収入面も含め「ばら色」の生活が待っている.その目標のために,アメリカの研修医は日々努力を惜しまない.
 一方,日本での研修後は,「ばら色」の生活が待っているのであろうか.残念ながら現状では研修後のレールが十分に引かれているとはいえない.例えば,一カ所の特定の病院に長年勤め上げることは困難で,数年間の転勤のたびに安い退職金をもらい,実質の退職金はわずかになってしまう.さらに,最新の技術の習得のみでなく,病院の採算性についても考慮するよう義務を負う.
 地方に勤務する医師を確保するには法外な賃金が必要であるとか,医師に高額所得者が多いとかという「うらやましさ」を前面に出した報道と,医療事故を冷たい視線で報道されることが目に付くのが現状である.このように表面的なことのみを興味本位に報道されることでは,医師への信頼が揺らぎかねない.
 今後は医師会や勤務医部会の活動などを通じ,勤務医の実態を一般の方々にもっと知ってもらう努力をしていくべきであると思われる.

(広島市立広島市民病院産婦人科主任部長 吉田信隆)

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