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第1027号(平成16年6月20日) |
街のがん治療
昨年九月,東京青山の診療所,山王メディカルプラザにオンコロジーセンターを開設した.外来抗がん剤治療とがん診療に関するセカンドオピニオン提供を柱としている.医師は私一人,専任看護師三人,薬剤師一人の最小ユニットで出発した.オンコロジーとは腫瘍学のこと,使い古されたがんセンターという名称を避け,オンコロジーセンターとした.しかし,知名度は低く,エコロジーセンターと間違えたミミズ生ゴミ処理の件で問い合わせが来たこともあった.
私は国立がんセンターで腫瘍内科医として十六年間勤務した.国立がんセンターには全国から患者さんが集まる.私の所属していた診療科では一日百人の外来患者を診ていた.臨床試験のインフォームド・コンセント,セカンドオピニオン提供,抗がん剤治療の説明,緊急入院の段取り,ホスピス病院への紹介など,朝から晩までめまぐるしく時間が過ぎていった.患者さんも診察まで三時間,抗がん剤点滴まで二時間待ちはざらである.国立がんセンターはいい方で,外科医が手術から抗がん剤治療,終末期医療まで行う病院では,外来待ち時間十時間というところもあるそうだ.
そんな状況に悲鳴をあげつつ,憂いつつの毎日を送っていた時,山王メディカルプラザの関連施設である国際医療福祉大学からオファーがあり,私が理想とするがんの診療,教育,研究を実践するフィールドが提供された. まず取りかかったのがオンコロジーセンターの旗揚げ,目指すところは街のがん治療.々の交番のようにがん治療と情報提供ができるオンコロジーセンターがあれば,患者さんは遠くのがん専門病院に行かなくても,安心と安全のがん医療を地元で享受することができるだろう.
(国際医療福祉大学 山王メディカルプラザオンコロジーセンター長 渡辺 享)
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