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第1039号(平成16年12月20日) |
DPCを導入して
平成十五年四月から,特定機能病院等八十二病院に入院診療包括評価制度が導入された.
これは,診療報酬点数表を基に診療行為ごとに診療費を計算する従来の「出来高払い方式」に変えて,入院患者の病名・症状を基に予め定められた診断群分類(DPC)ごとの一日当たりの点数を基本に,入院日数や医療機関別係数を乗じて得た点数に,手術料や処置料の一部を出来高として加えて診療費を計算する方式である.
入院医療の包括評価制度の基礎となる診断群分類は,特定機能病院から収集した平成十四年七月〜十月の退院患者に関わる調査に基づき開発されたもので,包括評価対象診断群分類は千八百六十に分類されている.
産業医科大学病院も平成十四年七月〜十月の退院患者に関わる調査に参加し,職員の協力を得て準備を進め,平成十五年四月から導入した.
導入後すでに一年半以上経過したが,その間,臨床専門家による診断群分類調査班の見直し案と,特定機能病院から収集した平成十五年七月〜十月までの退院患者に関わる調査に基づき診断群分類の見直しが行われた.その結果,平成十六年度の包括評価対象の診断群分類は,千七百二十七分類になった.
医療機関別係数について
医療機関別係数は,機能評価係数と調整係数を足したものである.機能評価係数は,その病院がどのような機能をもっているかを点数的に評価するもので,高い機能をもっている病院はそれだけコストがかかるので,それを点数的に評価するという基本的考え方である.調整係数とは,その病院の前年度の実績を保障するための係数とされているが,将来的には,クリニカルインディケーターやプロセス評価・アウトカム評価を係数化してなくす方向のようである.
当院の医療機関別係数は,平成十五年度一・〇九五九で,今年度は一・一三二八となっている.
DPC導入後の変化
当院が特定機能病院の標準とはならないが,当院におけるDPC導入の影響を前年度と比較した.
平成十五年度の包括評価と従来までの出来高算定との医療収入を単純に比較すると,入院収入で包括評価が七・八%増加となっている.対前年度比を見ると,入院単価六・三%増加,入院総点数四・七%増加の実績であった.
また,DPC適応率は四月は移行期で四八%であったが,五月からは八五%以上を維持している.入院に対する包括評価の割合は五四%で,出来高の部分がかなりあり,米国におけるDRG/PPS(診断群別包括支払い方式)ではなく,出来高に近いものとなっている.
当然のことながら,DPC導入前は保険の査定率が全体で〇・五%前後あったものが,導入後は〇・二%以下で推移している.他の医療機関からの報告を見てもDPC導入後の変化としては,平均在院日数の短縮,病床利用率の低下,検査の外来へのシフト,クリニカルパス利用率の上昇,保険査定率の減少,レセプト作業量の減少などが挙げられている.導入後の職員,特に,医師の診療報酬に対する意識とコスト意識が高まったことは確実である.
導入した医療機関で,出来高算定の数値と比較すると前年度より数%プラスであったという報告が多いが,今年度はDPCプラス効果は減少している.
DPCの今後の動き
このたび,中医協の診療報酬調査専門組織DPC評価分科会によるDPC導入病院を対象に行う影響調査の概要がまとまった.調査は九項目からなり,(一)退院患者,(二)診断分類の妥当性,(三)再入院,(四)医療連携と退院後受療,(五)医薬品・医科材料,(六)検査・画像診断,(七)医療の達成度,(八)看護の必要度,(九)アウトカムに係る調査となっている.
この調査でのデータを項目ごとに再分類し,それぞれの指標ごとにDPC導入に伴う影響の分析が行われることになっており,その結果が注目される.
今後の課題
DPCの目的は医療情報の標準化と透明化であり,支払い方式の改革ではなく,病院マネジメント改革だと位置付けられている.DPCに対応するためには,オーダリングシステムが基本となり,病院の情報化が重要となる.当院も今年三月にオーダリングを更新し,平成十七年三月のフルオーダー化と電子カルテに向けて準備を進めている.
日本の医療に求められているのは効率的な医療の提供である.包括払いの本質は,診療報酬と医療コストを分離する点にあり,医療側にとっては医療コストを下げる努力が必要である.今回のDPC導入の目的は,包括化をステップにして医療制度改革を進めることにあるとされているが,医療の質を維持,高める努力が今後の課題である.
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