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第1041号(平成17年1月20日) |
平成16年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「激動の時,新たな勤務医像を求めて」をテーマに
平成十六年度全国医師会勤務医部会連絡協議会が,昨年十一月六日,日医主催,熊本県医師会の担当により,熊本市内のホテルで開催された.
協議会は,「激動の時,新たな勤務医像を求めて―新臨床研修制度とともに―」をテーマとし,特別講演三題,報告二題,シンポジウム一題が取り上げられた.
特別講演
特別講演は,植松治雄会長による「今,医療に求められるもの」,小柴昌俊東京大学名誉教授の「宇宙と素粒子」,野村茂熊本大学名誉教授からは「北里柴三郎と周辺の人びと」と題して行われた.
植松会長は,講演のなかで,二次医療圏での医療提供体制の問題点として,病診連携に比べ,病病連携が進んでいないことを挙げた.また,今後の地域医療の変革に当たっては,病院の特性を考えた機能分担を図り,より病病連携を推し進めていく必要性を強調した.
混合診療については,全面解禁を認めてしまえば,医療保険の守備範囲が小さくなること,新しい医療技術などを普及させるには保険に適用されることが必要であることなどを挙げ,混合診療全面解禁を希望する動きのある勤務医に対して,理解を求めた.
最後に,医師免許更新についても触れた.更新のための試験を行うということは考えておらず,日医生涯教育制度で取得した単位と免許更新に必要な単位に互換性をもたせることが可能という考えを示したうえで,「それには,医師が積極的に生涯教育に参加し,国民に納得してもらうことが大事である」と述べた.
報告
日医・勤務医委員会の池田俊彦委員長の日医勤務医委員会報告と熊本県医師会の坂本不出夫理事による熊本県勤務医現況調査集計報告があった.
同調査は,熊本県内の勤務医二千三百四十八名を対象に行われ,千四百二十二名から回答があった(回答率六〇・六%).三十項目のアンケート結果のなかから,いくつかを紹介する.
週平均の実働勤務時間:公的医療機関の勤務医が多いため,四週八休が七一・四%を占めるにもかかわらず,勤務時間は四十八時間以上が五〇%と高い.
将来の開業予定:開業の意思なしが五四・七%を占め,過去二,三年の他県での統計(平成十五年奈良三二・三%,同十四年山口三四・五%,同十三年宮崎三六・四%)と比べて高い.
現在の職場の満足度:満足,ほぼ満足が七五・七%,大学病院(一〇・四%)や国公立・公的病院(一〇・〇%)は満足度が低い.
定年まで今の病院で働きますか:「はい」は二〇・五%,大学病院(四・八%)や国公立・公的病院(九・八%)は低い.
勤務する医療機関は都会と地方のどちらを希望するか:都会(四八・九%),地方(四二・九%)で拮抗している.
熊本県は,他県と同様,地方医療機関として医師確保に頭を悩ませているが,この結果をどう考えたらよいのだろうか.
シンポジウム
「臨床教育・研修制度改革と勤務医の役割」をテーマとして開かれた.
座長は,木川和彦熊本大学教授(熊本県医師会勤務医部会長),三上裕司常任理事が務めた.
阿部好文氏(田名病院理事長・東海大学客員教授)は,「卒前・卒後・生涯教育:変革の動向と背景」と題し,米国の例も挙げながら,この問題を総論的に述べた.
玉城和光氏(沖縄県立中部病院内科副部長)は,「卒前教育:病院でのクリニカルクラークシップの試み」で,同病院がいち早く医学生の教育に取り組んできた経緯とスタッフの熱意を披露した.
診療所で学生の臨床実習を長く実践している武谷茂氏(たけや小児科医院長)は,「第一線で直接患者に接することは,学生にとって,医師としてふさわしい人間形成のために有益である」と述べ,その経験に基づいた内容は,参加者に感銘を与えた.
市村公一氏(東京大学先端科学技術研究センター特任講師)は,新医師臨床研修制度について,勤務時間,給料,指導医など現時点の問題点に言及した.
齋藤龍也氏(熊本市医師会学術担当理事)は,熊本市医師会における生涯教育の実施状況を述べ,現状の問題点や参加者を増やすための工夫を,自身の考えを交えながら発表した.
フロアからも活発な質疑応答があり,この問題への関心の高さを印象づけた.
おわりに
熊本県の勤務医の医師会活動への参加率は,今回のアンケートでは二一・七%であった.
当日は,他の学会と日程が重なり,県内からの出席率低下が懸念されたが,県外二百五十名,県内百三十五名の出席で,会場は満員になった.
この会の開催が,熊本県内勤務医の先生方に,医師会への興味を少しでも抱いてもらうきっかけになればと願うものである.
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