|
第1043号(平成17年2月20日) |
震災を体験して
早いもので中越地震から三カ月余が過ぎた.罹災者は年末までに仮設住宅へ入居できたが,山古志村などの本格的復興は雪解けを待って行われる.
さて,地震当時,震源地にある当院では急患の対応に追われ,当然,空床などは,すぐになくなった.リハビリ室にマットを敷き詰め,救急室から次々と運ばれてくる患者に対応した.一両日で震災による外傷患者はやや落ち着いたが,今度は他病院の崩壊の連絡が入ってきた.震源地の病院で入院診療が困難になったことによる,百名規模の患者の転院希望であった.当院の入院患者に他の地域の医療機関へ移ってもらい,なんとか二十名前後の患者を受け入れるのが精一杯だった.実際,中越地区四カ所の病院で大規模な損壊があり,それぞれ百名前後の患者が他の地域へ搬送されることになった.
もちろん被災した病院でも,各地からの応援を得,救急医療は滞りなく行われたが,本来,災害対策の拠点となるべき病院が,診療機能を失うことは,深刻な問題である.
厚生労働省は,今になって災害拠点病院への耐震化対策の点検を始めたが,これだけの災害になると,拠点病院だけの問題ではない.診療レベルを維持するために医療機器を購入する予算の捻出が精一杯で,すでに老朽化した病院の耐震化対策や新築することが困難な経営状態が背景にあると思われる.補助金なしで病院を新築することなど,夢物語の時代である.
日夜粉骨砕身の思いで働く勤務医が,せめて経営面だけは安心して診療を続けられるような診療報酬制度改定を強く望む.
最後に,この度の震災で日医を始め多くの方から多大な支援をいただいたことに深謝いたします.
|