日医ニュース
日医ニュース目次 第1045号(平成17年3月20日)

勤務医のページ

勤務医の過重労働

 労働基準局が,昨年,全国の五百九十六医療機関に対し,宿日直勤務に対する指導監督を行った結果,七割の医療機関において,「何らかの法違反」があったことが判明した.具体的には,昼間と同様の業務であったり,当直回数が原則を超えていたりしており,二百五十病院に対し,指導文書が交付された.
 昼間の勤務においても,患者さんへの説明の機会が多くなったこと,新医師臨床研修制度が開始されたこと,市中病院においても研修医の指導を行うようになったこと等により,また,満床率の確保,在院日数の短縮などと相まって,勤務医にとって,ますます過酷な労働環境になっている.

大阪府医師会の勤務医アンケート

 大阪府医師会が,平成十六年にまとめた会員意見調査のうち,勤務医に関するものを紹介する.
 府医会員数は一万六千八百二十四名で,うち勤務医は九千七百二十名(五八%,平成十五年五月末現在)を占める.調査は,医療に従事していない者・病院長などを除いた,勤務医千二百三十四名を抽出し,アンケート票を送付,回収率は六三%であった.
 図に一週間の超過勤務時間を年齢別に示す.
 週二十時間を超える人がかなりあり,二十九歳以下では三四%に達し,三十歳以上五十九歳以下の各年代でも一二〜一五%に達する.二十九歳以下では四十時間以上の超・超過勤務時間においてもピークを認めた.半数以上の医師が,医療安全,自分の健康,家族との関係に不安を抱いていた.
 厚生労働省は,過重労働とメンタルヘルスを産業医の重点項目としており,過労死の労災認定基準では,発症前一カ月間に百時間を超える時間外労働の関連性が強いとしている.週当たりに換算すると二十五時間であり,多くの勤務医がこれに該当する.科による差もあり,特に,小児科や産婦人科で超過勤務時間が多かった.

図:大阪府医師会勤務医アンケート・1週間の超過勤務状況(%)

勤務医の過重労働への対応

 一,センター病院構想
 小児科や産婦人科において,地域の病院では,三〜四人の勤務医が,三〜四日に一度の当直,オンコールを行い,翌日には通常勤務をこなさなければならない.このままでは,わが国の小児科,産科の入院医療は崩壊するといっても過言ではない.
 それに対し,日本小児科学会では,センター病院構想を提示.センター病院では約十人の小児科医を配置する一方,センター病院以外の地域病院では二〜三人を配置し,軽症の入院患者を受け入れ,当直をせず,センター病院の救急外来に参加するというものである.
 この構想によって,地域の救急を円滑にし,かつ勤務医の勤務条件を適切なものとすることが期待されている.しかし,大学や設立母体を超えた人事,センター病院への患者の集中,それ以外の病院のメリットがない,などの問題点が残されている.
 二,女性医師への対応
 女性医師の増加への対応も大切で,産休・育休への応援体制の確立が急務である.家庭に入っている女性医師の復帰,一ないし二年の短期の応援医としての勤務体系,専門医としての再教育などの課題がある.
 三,根本的な対応
 基本的には,今の診療報酬体系では解決できないことばかりである.欧米に比べ,国民総生産当たりの医療費は少なく,ベッド数当たりの医師や看護師の数も極端に少ない.病棟での医療秘書など,医師の手助けをするコ・ワーカーの確立も必要である.規制改革・民間開放推進会議が主張するように,低賃金の外国人医師を受け入れるような安易な解決策をとってはならない.
 本来,わが国の医療はどうあるべきかを,病院経営者も勤務医も一緒になって考えなければならない.国民にも理解を求め,厚生労働省,財務省,さらには小泉首相の考え方を変えるように働きかける必要がある.

(大阪府医師会理事,大阪市立総合医療センター小児内科部長 藤田敬之助)

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