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第1057号(平成17年9月20日) |
緊急課題:医師勤務環境の改善
医師定員五名の産婦人科を三名で運営している.毎月四十件を超える分娩と,婦人科腫瘍手術・化学療法,毎日九十名の外来患者を診療しつつ,部長を含め全員が週一回の平日当直と月三回の休日の日・宿直(正確に「時間外勤務」と呼ぼう!)を,(研修医の前では)平気で楽しそうにこなす.事故を起こすまいと歯を食いしばりつつ,バーンアウトして開業していった他院の部長の心中に思いを馳せる.
大阪府下では過去二年で,地域の中核的な病院の少なくとも八施設が,医師不足を主な理由に分娩取り扱いを中止し,診療所を含め,市民が分娩できる施設が皆無となる市・区が出現しつつある.大阪府医師会では,「周産期医療システム再構築検討委員会」を立ち上げたが,解決策は容易には見えてこない.
小児科,麻酔科,産婦人科で顕在化してきた医師不足は,単に「偏在」で説明できる問題ではない.わが国の「安上がりで高水準の(?)医療」を支えてきた勤務医の過重労働は,限界に達しつつある.今後,さらなる医療費抑制策,就労環境が整備されないままの女性医師の増加,電子カルテ,病院機能評価などによる「非診療業務」の増加が,高度・良質な医療の提供に専念したい勤務医の夢を打ち砕く.
医師にとっての勤務環境の改善は,市民,患者にとって望ましい医療改革につながるはずである.医療安全を支えきれない不安におののく「ものいわぬ勤務医」が声を上げなければ,状況はさらに悪化の一途をるに違いない.医師会が何をしてくれるのかではなく,医師会に集い,何ができるのか―勤務医にとって医師会の意義が,今,問われている.
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