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第1059号(平成17年10月20日) |
座談会(第1回)
医療環境変革期における勤務医の役割
日医の勤務医委員会では,「医療環境変革期における勤務医の役割」をテーマに,座談会を開催.今後,四回にわたって掲載する.
池田(司会) 本日はお忙しいなかをありがとうございます.「医療環境変革期における勤務医の役割」というテーマで,思うところを存分にお話しください.
三上 研修制度や医局制度の問題などについて,さまざまな角度からお話を聞かせていただきたいと思っています.
新医師臨床研修制度が始まって
池田 では,はじめに新医師臨床研修制度についてお聞かせください.
湧田 私のところは,三百床あまりの病院で,始まる前は,こういう勤務状況のなかで教えられるのかがいちばんの問題だったのですが,協力型から始めましたので受け入れる人数も少なく,やっていけるということになりました.そこで,来年度は,管理型で採ろうという話が出ています.
人を指導するということは,指導医自身の認識を新たにすることかなと改めて思っています.
忙しいなかでも,病院で受け入れられる人数を把握しておけば,十分な研修ができるのではないかと思います.
内藤 私の病院には研修医はいないのですが,大学の手伝いに行っている関係もあって,研修医を見ています.大学病院はかなり人手が減っていて,研修が相当負担になっているようです.
山田 私のところは京都市内の五百床の民間病院です.研修医を毎年十名ずつ採りましたが,採るに当たっていちばんの問題は,指導する余力があるかどうかということでした.一年目はさすがに箸にも棒にも掛からなかったのですが,二年目に入った途端に,ある程度のことは任せられるし,次に入ってきた世代を指導できるようになってきていますから,最初の過渡期を乗り越えると,あまり問題ではなくなってきました.
民間病院は人手が足りないので,人材を求める入口が新たにできて,病院としては発展する良いチャンスになっていると,一年終わって総括しています.
浜本 うちの病院の研修医は一年目,二年目合わせて十二名なのですけれども,問題点は,地方の病院ですので,今後,研修医が本当に残ってくれるのかということです.やはり,都会志向がどうしてもあるようで,いかに魅力ある研修プログラムを作れるかということに,かかってくるのではないかと思います.
研修医の当院での研修に対する評価は,「まあまあ満足している」ということのようですが,今後カリキュラムを工夫していかないと,だんだん研修医は減るだろうとは皆で話しています.
田中 私は現在,研修二年目で,まさしく今,新制度で研修をしています.皆さんとは立場が違うかと思います.私が研修している福岡県の麻生飯塚病院は,昔からスーパーローテートを行っている研修指定病院なので,新しい研修制度が始まってからも,研修医にとっては特に大きな変化はないのだろうと思います.
うちの病院の場合は,総合診療科の部長が中心となって主に研修プログラムを作っています.その総合診療科などは,研修医教育に熱意のある指導者がいて,指導にも慣れていらっしゃるようです.以前には,科によっては大学の医局からの派遣で来られていたりすると,戸惑いがあったりしたようです.臨床研修が必修化されたことで,ローテートを受け入れるいろいろな科の先生の賛同が得やすくなり,指導してもらいやすくなったという変化があると聞いています.
山田 私どものところは,二十科ほどありますが,プライマリケアが目的なので各科をローテートせざるを得ません.一科当たり数週間というレベルになって,プログラムをどうするかが最初の問題です.
研修医は,最初は,カルテの書き方も分かりませんが,秋ぐらいになってくると大体要領が掴めて,その科の全貌がほぼ分かってきます.「さて指導しようか」といったときに次の科に行ってしまうという状況なのです.
二年目に入ると,任せてくれてもよいという自信のある態度に変わってきましたので,研修医から文句が出るぐらいのビジーなプログラムでちょうどよかったのかなと,今は判断しています.最初は,かなり批判は強かったですね.
田中先生のところは,総合診療部で回ったのですか.
田中 総合診療科も内科の一つとしてスタートしました.飯塚病院でもほぼ各科,長くて二カ月ぐらいのスパンで,長さとしては学生のときのベッドサイドラーニングとあまり変わらない状態でした.受け入れられる先生方も,短い期間で何をどこまで教えてよいのか戸惑っておられる様子も分かりますし,研修医も慣れたころにまたゼロからのスタートで,最初は少し戸惑いがありました.
二年目になって,そういう状況にも少しずつ慣れてきて,いろいろ回ってみてよかったという部分と,もう少し一つひとつのスパンを長くして,ポイントを絞ってもよかったのではという部分とがあると思います.
湧田 内科系,特に,四科くらいの専門科を分けて最初回っていただいたのですが,すぐにその問題が出まして,今年からは内科を二つに分けて,そのなかに専門科が複数入り,オーバーラップして患者さんを持つという形ですから,それぞれの指導医もオーバーラップしていく.指導医には,いわゆる専門科というカラーはなるべく消して,プライマリのことをまず教えるようにいっています.
救急はドクター専任ではありませんので,いろいろな科の先生が来られて救急を受け持たれます.救急をどうしていくかというのが,次の課題になっています.
浜本 うちもER(救急救命室)がありますから,本来しっかり教えられないといけないのですが,ER担当医師の大半が兼任ということもあり,どうしても片手間になってしまう.研修医は,救急に非常に興味があると思いますが,きちんとした教育ができていないというのが大きな悩みです.
湧田 私どもは指導医の負担が大きすぎるのではないかということで,救急や当直の回数を減らしたのです.ほかの病院では研修医が最初から救急,当直にも対応できている状態だと聞いて,今年から少し増やそうかと考えています.
山田 私どもの病院は,当直は七人体制で,常勤医はそのうち一人か二人ですから,常勤医が当直している日に限って一年目を救急車対応でつけていました.
二年目に入って,内科系を一通り回っているということもありまして,内科の時間外を含めた診察を単独でするようにしています.
田中 救急外来の当直と病棟の当直と二つあるのですが,基本的に一年目は必ず二年目以上の者と一緒に診察をします.自分が行った診察の中身,判断を上の者に話して,了解をもらうという仕組みになっています.
二年目以降からは,ある程度,自分の判断で行える診療の範囲が大きくなります.
勤務医座談会 出席者
(司会)
池田俊彦(日医勤務医委員会委員長・福岡県医師会副会長)
田中俊江(麻生飯塚病院研修医)
内藤博邦(医療法人内藤病院副院長)
浜本隆一(松江赤十字病院副院長)
山田 仁(医仁会武田総合病院泌尿器科手術部長)
湧田幸雄(済生会山口総合病院副院長)
三上裕司(日医常任理事)
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