|
第1075号(平成18年6月20日) |
臨床研修の多様化に対応
新医師臨床研修制度の一期生が巣立った.この二年を振り返ると,研修の「多様化」を感じる.
今回の制度では,厚生労働省の掲げる目標に到達しなければ修了認定されない.この点からは卒後研修を一律化しているように見える.
ところが,実際は逆に多様化している.研修に関与する病院が増え,個々の病院には個性があるからである.前出の到達目標は,個々の病院の研修の一部にすぎない.
第一に,研修パターンが多様化した.初期研修病院の選択肢が増えただけでなく,後期研修の選択も多様化した.
入局の有無,大学か市中病院か,専門科かローテート研修かなどを選択できる.入局してから他の病院で後期ローテート研修というのもある.
第二に,研修医個人の要望が多様化した.以前よりストレートに要求を言ってくる.なかには外国人のように強く権利を主張する者もいる.研修病院は多様化する研修医の要望に応えるべく,包容力,柔軟性が要る.
外食業に例えれば,以前は大学医局という大規模レストランで,Aランチ,Bランチといった定食を用意していれば事足りた.定食に不満を言えば研修医が悪かった.
今では大規模店よりも小ぶりなレストランが好まれる.そこでは,卵や肉の焼き方など,自分の好みが通る.途中でメインディッシュを替えることもできる.馴染みの店では顔を見ただけで客の好みが分かる.テーラーメイドである.
良い研修を行うためには,研修医の細かい注文に応える力量が必要になる.とはいえ,今の「外国人」研修医に迎合するつもりはない.研修医に対して,できないことには,はっきり「ノー」と言ったうえで,なるべく要望を聞くようにしている.
(鳥取県立中央病院麻酔科部長 内田 博)
|