日医ニュース
日医ニュース目次 第1085号(平成18年11月20日)

勤務医のページ

全国大学医師会連絡協議会いよいよ発足!

図 全国大学医師会連絡協議会
 去る八月五日,東京都医師会館において全国大学医師会連絡協議会が発足した.東京都には十三の医科大学あるいは医学部があり,そのうち十二施設に大学医師会が存在し,東京都大学医師会連絡協議会を組織して意見交換などを行っている.
 近年,大学医学部や大学病院が多くの共通する問題を抱えていることが明らかとなり,すべての大学医師会が力を併せてこれらの問題に対処していくべきであるとの機運が高まり,全国に呼び掛けたのが始まりである.この呼び掛けに応じて,全国八十一医科大学/医学部の六十大学医師会から五十医師会,医師会のない二十一施設からは十二施設を加えて,大多数の医科大学/医学部からのご参加をいただいた.
 当日は,唐澤人日医会長,鈴木聰男東京都医師会長をはじめ,全国から大学医師会長ならびに施設代表の方々が出席し,運営方針,規約,事業計画などを決定し,日医の地区ブロックに対応する地区ごとと東京都で幹事を選出し,互選にて会長と事務局を決定した(図).なお,メンバーの少ない地域は当面統合して運営される.
 当面の活動として,大学医師の活動状況,特に勤務・経済環境を明らかにし,広く日医会員や国民に周知して,その改善・向上を目指すこととしている.
 近年,大学病院における診療を取り巻く状況は,医療事故の多発,新医師臨床研修制度の導入,旧国立大学の独立行政法人化など,大きく変化している.そのなかで,大学病院の医師は診療面では,難治性疾患などに対する高度かつ先進的・専門的医療や若手医師の臨床研修などを担っている.加えて,医学部学生の卒前教育に欠くことのできない存在であり,近年は高学年の臨床実習のみならず,入学初期からの医学教育にもそのかかわりが増大しつつある.
 さらに,高度先進医療とは切り離すことのできない研究も重要で,疾病の原因同定,発症機序の解明,診断法や治療法の開発を担っている.特に治療法の開発では,臨床試験や治験の重要性も一段と増している.このように,大学病院には他の医療機関では代替できない大きな責務があり,それは着実に大きくなりつつある.
 大学病院の医師の給与は低く,診療所や一般病院に勤務の医師と比べ最低の水準であるが,それでもかつては,自らの好きな研究をする自由と時間がもっと存在した.そして,米国の五分の一から十分の一という,きわめて少ない教員で必死の努力を続け,世界のトップレベルの診療や研究をしてきたと言える.
 今はどうであろうか? 医療・医学教育のレベルやサービスの向上に比べてほとんど人員が増えないため,一人一人の仕事が増え続け,若手・中堅医師には,もはや大学病院にとどまるメリットはないと大学に見切りを付ける動きが加速している.このまま放置すれば,大学における医学と医療の荒廃が進み,必ずや近い将来に日本の医療全体が壊滅的なレベルの低下を招くことになろうと危惧される.
 すべての医師を養成する大学医学部と大学病院が潰れてしまうことは,診療所あるいは病院といった診療形態にかかわらず,すべての医師と医療機関にとって影響は甚大である.この大学医学部と大学病院の現状については,ほとんどの国民はもちろん,多くの大学病院以外の医師ですら,知らないと思われる.
 このような,危機を目の前にして,今こそ大学の医学・医療を立て直し,あるべき姿に向かって大学医学部と大学病院の医師であるわれわれ自身が動き出す必要がある.
 大学医学部や大学病院を代表する組織としては,全国医学部長病院長会議等があるが,公的な性格が強く,そこで働く医師の代表というには,かなり遠いというのが現実と思われる.すなわち,大学病院あるいは大学医師の立場を十分に代表する組織は少なかったといえる.全国大学医師会連絡協議会は,まったく自発的な組織であり,より自由かつ柔軟に活動できる.したがって,全国医学部長病院長会議等とは,まさに車の両輪として相補う関係にある.
 日医の勤務医部会は勤務医全体の問題を扱うなか,全国大学医師会連絡協議会は,大学病院の持つユニークな特徴に基づいて,そこに特化した活動をすることによって,勤務医部会全体の発展にも貢献できるものと期待している.日医が日本のすべての医師を代表する組織として真に発展するためには,この全国大学医師会連絡協議会の活動と発展が必須と思われる.
 われわれの活動により,多くの診療所あるいは一般病院の医師はもちろん,広く国民に,大学医学部と大学病院の現状ならびにそこで働く医師の献身的な活動を詳しく知っていただくことができるものと期待している.そして,国民に正しく理解してもらい,世界をリードする医学研究,効率的な医学教育,そして安心でき,かつ高度な医療を実現したい.
 ご意見や情報があったら,ぜひ全国大学医師会連絡協議会事務局までご一報いただきたい(東京医科歯科大学医師会内,〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45,東京医科歯科大学医師会,TEL:03-5803-4745,FAX:03-5803-2231,メール:アドレス).

(全国大学医師会連絡協議会事務局・東京医科歯科大学医師会長 水澤英洋)

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