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第1089号(平成19年1月20日) |
地域完結型医療への転換
総合病院の役目は終わったのか.
以前の総合病院は,玄関をくぐった人の需要にこたえるべく,内科,外科はもちろん,婦人科,小児科,耳鼻科,歯科など,すべての科をそろえていた.そして,めでたく退院の日を迎えていたのである.すなわち,病院完結型医療である.しかし,厚生労働省の医療改革は地方の総合病院を直撃した.
在院日数の短縮化,DPCの導入,クリニカルパスの整備,医療費の自己負担の増額,在宅医療の支援などにより,総合病院は否応なくベッドに空床が目立つようになり,経営が圧迫され悲鳴を上げている.追い打ちをかけるように,若い研修医の都会流出により,地方の病院は高齢化が起こっている.ゆゆしき問題である.
しかし,総合病院が地域に果たしてきた役割は,地域医療のレベルの向上,診療所のバックアップ,夜間の急患対応など,決して小さくはない.全国で勤務医の疲弊が叫ばれているが,勤務医は日夜,重症患者,急患に対応しているのである.
また,地方の病院にも多くの認定医,専門医,指導医がいるが,現在のシステムでは,麻酔科専門医しか診療報酬上の優遇はない.
患者は総合病院に高度医療を求め,それにこたえるべく,勤務医は勉強し,技術を習得し,専門医を目指す.
病院の診療機能,実績,専門医の数などの公表が義務付けられようとしている今,専門医が専門医であるために,診療報酬に跳ね返るシステムの構築をぜひ願いたい.
総合病院は今,変わろうとしている.自立し,地域に開けた病院,診療所の先生方が出入りしやすい病院へ.そして,病院で完結していた医療から,地域全体で医療を提供する地域完結型医療へ転換する時代がやってきた.
(鳥取赤十字病院副院長 西土井 英昭)
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