日医ニュース
日医ニュース目次 第1097号(平成19年5月20日)

勤務医のひろば

医療安全への取り組み

 「医療安全」が言われて久しい.しかし,残念ながら,医療事故の報道は後を絶たない.未曾有(みぞう)の高齢社会,患者権利意識の高まり,医療に対する過度の期待,医療の不確実性,リスクに対する無理解等が背景にあると思われるが,マスコミの“医者いじめ”に近い話題提供,知識人と称する人たちの医療への提言,批判などが,さらに煽(あお)り立てる.このようななか,埼玉県は,医療事故に対して,積極的に独自の取り組みを行っている.
 埼玉県医師会では,平成十四年より裁判所,弁護士会,医師会,基幹病院からなる「さいたま医療訴訟連絡協議会」を設置し,活動している.主な活動は,大きく分けて二つあり,一つは医療関係訴訟の審理長期化改善のための“鑑定人選任システム”の構築である.
 県内二十五の医療施設から,あらかじめ同意を得た百二十五人の鑑定人候補者のリストを作成し,推薦する.これは県内のみならず,東京,横浜,千葉とネットワークをつくり,他の地裁からの依頼にも対処している.
 もう一つは,医療・法曹界の相互理解を深める目的で,医療現場,裁判実務の現状等について,交流,教育を行っている.具体的には,実際の判例に基づく模擬裁判,パネルディスカッションが行われた.これまでに,「医療水準」「医師の説明責任」をテーマに開催され,『判例タイムズ』にも掲載された.
 厚生労働省は,平成十七年に,「医療関連死調査分析モデル事業」を始めたが,はかばかしい進展は見られない.医療関連死を含め,紛争が危惧される場合,院内での調査,検討は当然であるが,他施設の専門家の意見や第三者の見解が必要とされることも想定される.
 埼玉県では,心臓・血管関連分野で,医療事故検討委員会が設立され,これをさらに他分野にまで広げていく予定である.

(埼玉社会保険病院院長 細田洋一郎)

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