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第1115号(平成20年2月20日) |
平成19年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「高めよう勤務医の情熱,広げよう勤務医の未来」をテーマに
平成十九年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催,沖縄県医師会担当)が,「高めよう勤務医の情熱,広げよう勤務医の未来」をメインテーマとして,昨年十月十三日,那覇市内で開催され,全国から三百八十一名の参加者があった.
唐澤人会長は,「日本の地域医療は,今まさに崩壊の危機に瀕している.医療のあるべき姿を実現していくためには,医師会を中心とした勤務医と開業医の大同団結が必要不可欠である.先生方のいっそうのご理解とご協力をお願いしたい」とあいさつした.
つづいて,宮城信雄沖縄県医師会長が,「医師不足や勤務医の過酷な労働環境等について,その窮状を国政やマスコミに訴え,課題の解決につなげていけることを期待している」とあいさつした.
特別講演一
唐澤会長が,『「社会保障制度の視点と医療制度の展望」〜少子高齢社会における地域医療の将来像〜』と題して講演.そのなかで,地域医療の現状について,小児科・産科・救急での医療が崩壊しつつあることを憂慮.労働環境が悪化している状況を踏まえ,女性医師のさらなる活躍や,地域における医療連携の必要性を指摘した.また,医療機関の損益分岐点比率が九五%を超過し,厳しい状況に置かれていると説明したうえで,「これ以上マイナス改定が続けば,地域医療は崩壊してしまう」と述べた.
日医勤務医委員会報告
池田俊彦日医勤務医委員会委員長より「二〇〇七年八月一日現在,全医師数は二十七万三百七十一人,日医会員十六万四千五百七十六人,うち勤務医が七万六千九百三十人(四六・七%)と前年と同じ割合である.都道府県医師会勤務医部会の設立状況は,二十九県で設立済,設立予定が一県,設置予定なしが十七県」との報告があった.また,今後の医療の展望を開くためには,「向かうべき方向と課題を示すだけでは問題の解決にならない.何とかして一歩踏み出そう」と述べた.
沖縄県医師会勤務医アンケート調査報告
嘉手苅勤沖縄県医師会勤務医部会長より報告があった.「調査対象医師は千九百五十四人で,そのうち一〇六二人(五四・四%)から回答を得た.
調査の結果から,(1)大学病院においては,給与および福利厚生面での処遇の改善が必要(2)研修病院では,長時間による過重労働や当直回数が多く,特に管理型研修病院ではその割合が顕著.また,臨床研修指導医に対する経済的保障が不十分(3)女性医師の問題は,育児支援体制がない等,困難で劣悪な労働環境に置かれ,早急な支援体制の確立が必要(4)新医師臨床研修制度では,プライマリケアを重視する若手医師が多く,また離島医療に興味を持つ若手医師が多い(5)医師会については,もっと勤務医のための積極的な処遇・環境改善に努め,加えて,勤務医に対する広報活動を強化すべき」と分析した.
特別講演二
菊池英博日本金融財政研究所長は,『「未来にすくむな日本人」〜日本は財政危機ではない,日本国民のために我々のカネを使おう〜』と題して講演.経済アナリストの視点から日本の医療問題について,「構造改革の失敗のツケ回しが医療費の圧縮につながっている」と説明し,「日本は財政危機ではなく,政策危機である」と述べた.
特別講演三
高石利博ノーブルメディカルセンター医療顧問が,「沖縄の民間信仰とターミナル医療」と題して,沖縄文化に根付く民間信仰(先祖崇拝)から見たターミナル医療について,地域医療で経験した事例などを写真で紹介しながら講演を行った.
シンポジウム
著しく変化する医療提供体制に焦点を当て,勤務医の過重労働の解決策を探るべく,「病院の機能分化について〜勤務医の現状を踏まえて〜」と題して,(一)厚生労働省の考え方,(二)大学病院の現状,(三)県立病院の現状,(四)地域一般病院の現状,(五)慢性期病院の現状,(六)沖縄県の女性医師の現状─について,各分野から発表が行われ,つづいて,鈴木満常任理事から中央情勢を交えた発言があった.
その後,行われたディスカッションでは,活発な質疑応答が行われた.
「沖縄宣言」採択
協議会の最後に,全国医師会勤務医部会連絡協議会の総意の下,勤務医の過酷な労働環境の改善や政府の医療費抑制策の見直し等を求める「沖縄宣言」が採択された.同宣言文は,後日,唐澤会長から,福田康夫内閣総理大臣や舛添要一厚生労働大臣をはじめ,関係各所(計五十三名)へ送付された.
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