日医ニュース
日医ニュース目次 第1121号(平成20年5月20日)

勤務医のひろば

山口県勤務医部会の取り組み

 平成十七年三月の山口大学定年退職後は,念願の患者と向き合う医療を実践したいと考え,現在の病院に勤務することにした.ところが,国の猛烈な医療費抑制策や医師不足というダブル・パンチを浴び,独立採算の病院をいかに黒字ベースで経営するかに腐心する毎日になってしまった.
 そんななか,平成十八年五月,突然,山口県医師会から勤務医部会の引き受けを依頼された.何でも,現在の部会長が院長として勤務している病院が医師の引き揚げにあい,部会長などしてはおれない状況だとか.医師不足と医療崩壊という昨今の状況を正さなければ,世界に冠たる日本の医療制度が守れないと思っていたこともあり,敗れはしたものの,より良い医療を目指した“インターン闘争”のころのエネルギーに火が付き,“なんとかせんといかん”と引き受けることにした次第.
 活動は,勤務医の待遇や労働環境改善と女性医師問題に絞り,副部会長を中心にした企画委員会で,種々の角度から検討することにした.そのために行った県下勤務医の実態調査では,「過重労働の改善とモチベーションに見合う収入の確保があれば,勤務医でありたい」とする勤務医が圧倒的に多いこと,また,女子医学生の急増から女性医師の妊娠,出産,退職という流れが,今後,加速される恐れが大であることから,短期的には,女性医師の処遇改善や復職のための教育プログラムの導入を,長期的には,女子医学生のみならず,女性医師を目指す高校生に,将来必ず遭遇する問題点について考えさせる教育システムの導入が指摘された.
 「月四回以下の日当直,オンコールは週四回以下,モチベーションに見合う収入」が満たされれば,勤務医を続けたいという,きわめて当たり前の声が圧倒的で,勤務医部会の活動のターゲットは絞り込めたと思っており,今後は改善に向け,対大学,対自治体,対経営母体と,あらゆる方策を考えて活動を続けて行く考えでいる.

(社会保険下関厚生病院長 沖田 極)

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